2008年1月26日

実験経済学とFCC Auction

Google Airwave 社が携帯電話(携帯端末)ビジネスをはじめるために、無線周波数オークションに参加しています。1月24日に、700MHz無線周波数帯の全米での使用免許権が競売入札にかけられました。これは、FCC(連邦通信委員会)が"第73番オークション"とよぶもの。携帯端末事業に使える無線周波数帯の使用免許は、これが最後のものとなりそうなので、グーグルも競売入札に参加しました。FCCが見込む歳入は、最低でも10億ドル(1060億円)ということ。この落札額は、FCCが行ってきた一連のオークションのなかで、おそらく最高額となりそうです。

誰が使用権を競り落とすのか、Googleの携帯端末ビジネス(gPhone)の行方は? ビジネスの世界で注目を集めるのはもちろんなのですが、実は、このオークションに注目する経済学者もいます。そのわけは、このオークションが新しい方式で行われるからです。

新しい方式は、組み合わせオークション (Combinatorial Auction)あるいはパッケージオークション(Package Auction)とよばれるもので、複数の使用免許を同時に競売にかけるのに適した方式です。全米の無線周波数帯使用免許といっても、全米をカバーする使用免許がひとつだけ競売にかけられているのではありません。FCCは、全米を12の地域にわけ、それぞれの地域での使用免許を同時に競売に出します。組み合わせオークションでは、個々の免許を別々に競り落とすのではなく、12ある免許のうち、いくつかを組み合わせてパッケージを作り、そのパッケージに入札することが可能なのです。オークションの具体的な形式は Rothkopf, Pekec and Harstad (1998) の hierarchical package bidding というもの。それぞれのパッケージの値段をオークションの途中でどのように上げていくのかなど、実際には、もうちょっと複雑な設定が必要です。また、FCCは実験経済学者にオークションの具体的な仕様のテストを依頼することがこれまでにもありました。

オークションは現在進行中。週末をはさんで、月曜日から再開されます。すでに3.7億ドルの値がつけられているようですね。詳しい金額などはFCCのwebsiteで全部公開されていて、Auction 73: 700 MHz Bandで見ることができます。さすがアメリカ、これが透明性というものでしょう。

2008年1月4日

実質を無視した形式主義(日本の現場力)

成田空港での荷物検査。航空機内への液体物のもちこみには制限があって、1リットルの透明なチャックつきのビニール袋に入るものしか持ち込めません。シャンプーやら化粧水などなど、たくさん詰め込んでいる人が結構いますね。

私は小さなローション瓶(3cm×5cm)をもっていたので、専用トレイにその瓶だけをいれて、X線検査に通しました。小さな瓶が1つだけなので袋に入れる必要はないだろうと思い、1つのトレイにその瓶だけを置きました。アメリカでもいつもそうしていますし。ところが、金属探知機ゲートを越えて、X線検査から戻ってきた荷物をまとめていると、「これは、お客さんのですか。液体物はビニール袋にいれていただかないと」といわれました。「あ、そうですね、すみません」と言ったのですが、それではすまないようで、ビニール袋はないかとさらに聞いてきました。わざわざビニール袋にいれて、もう一度X線検査機に通すつもりなのでしょうか。去年だけでも30回以上も世界各地で飛行機にのっていますが、問題はありませんでした。仕方ないなあと思いながら、ビニール袋を探していると、「じゃ、今回だけ、これで」と不機嫌そうに国交省御用達の専用ビニール袋を胸ポケットから出してきてくれました。「あ、どうも。助かります」といって、私がもっていた小さいローション瓶を袋にいれた瞬間に「OKです」と、その係員は立ち去りました。え?? いったい、なんだったんだ!!? わかる人にはきっとわかっていただけると思いますが、この現場係員の「実質を無視した形式主義」に、日本の強さと弱さの両方を改めて実感しました。