2010年6月22日

コペンハーゲン Risk and Time Preferences

コペンハーゲンのビジネススクールの「リスク選好・時間選好カンファレンス」に行ってきた。この分野で実験をしている人たちが多く集まっていたので、いろいろと勉強になる。カンファレンス出席者が、論文を書いた時のレフェリーになるかもしれないので、どういう傾向のことに関心があるのかをシェアするのはとても重要なこと。

コペンハーゲン駅前には、あの世界最古のテーマパークというチボリ公園(写真)がある。日本にもかつて岡山県倉敷駅前に「倉敷チボリ公園」という、この本家チボリと"提携"していたものがあった(1997~2008年)。赤字の三セクみたさに倉敷チボリを訪れたのだけど、そのときは「やれやれ」としか思わなかった。それが今回、この本家チボリのゆったりとした時間が流れる落ち着いた雰囲気を体感して、なるほどこういうものを作りたかったのだなと少し納得。

さて、私は、主催者たちが以前に考案した実験方法についてコメントしていたもので、それに感謝するためかディナーに呼んでくれた。その実験方法を、彼らは incentive compatible (回答者がウソをつかない)ものとしていたのだけど、実はそれはちょっと違っていて、そのことを教えてあげた次第。私も当初、彼らの手法を使わせてもらおうとしたのがけど、よおく考えてみると、ウソをつくことで回答者が得をする反例に気づいた。その反例を教えてあげたので、その御礼ということかな、ディナー美味しかったです、ごちそうさま。

学会会期中、早稲田の実験経済学は1回おやすみ(後日補講)にして、その間は、Machina三角形についての宿題をやってもらっていました。ちょうど、ディナーに、Machina先生もいたので一緒に写真に写ってもらいました。

2010年6月13日

博士号をとるステップ2:コースワークを終えて

前回の続き。
博士(Ph.D.、「ピーエイチディー」)になるときの手続きは次の通り。
Course work → preliminary (comprehensive) exam → 3rd year paper → committee → proposal defense → oral defense → doctoral thesis (dissertation).

3rd year paper: コースワークを終えた3年目に論文を1本書くことになっている。3年目だから、日本でいえばD1にあたる段階。このときにそろそろアドバイザー(指導教官)を決めなくてはならない。どの先生に指導教官になってもらうかは、博士課程にあって一番重要なことだ。これは、どんなに強調しても、強調しすぎることができないくらい重要だ。このドラマについてはまたいつか別の機会に書こう。

cognate: コグネイト、大学のポリシーとして専門以外の科目の講義も勉強しなくてはならないことがある。

2010年6月4日

博士号をとるステップ:修士号と博士号

とても懐かしい。おもわず買ってしまった。このクッキーを、3年前の5月のディフェンスのときに買ってもらったのを思い出した。ディフェンスというのは博士論文の口述試験のこと。博士号取得の最終段階で必要なステップだ。

博士論文についての発表だから、2時間以上になるのは当たり前。審査員となっていただく先生方のおなかをすかせてはいけないので、飲み物といろいろなスナックを用意して備えた。そのスナックのひとつが、写真のクッキーだ。これをみて3年前のことが思い出された。2007年の夏に博士号を取得 → 妻の妊娠 → LAと東京の往復生活 → 一橋に就職 → 日本に戻る → 出産・育児と、振り返る暇もないまま3年が過ぎた。博士論文もパブリッシュしたことだし、忘れてしまう前に、ミシガン大学での博士号取得プロセスを振り返っておこうと思う。

博士(Ph.D.、「ピーエイチディー」)になるときの手続きは次の通り。
Course work → preliminary (comprehensive) exam → 3rd year paper → committee → proposal defense → oral defense → doctoral thesis (dissertation).

大学を卒業すると、学士号(BA)という学位を取得できる。大学の卒業証書には、あなたは学士になったんだということが書かれているはず。それで、そのあと大学院に行ってとれるのが、修士号(MA、エムエー)だ。通常は2年間、ある特定の専門分野についてみっちり勉強することで取得できる。ビジネススクールでとれるMBAは、Master of Business Administration の頭文字で、ビジネス分野(経営学)での修士号という意味だ。

私が取得したPh.D.(博士号)は、そのさらに先。修士号がある特定分野のことを詳しく知っていることの証であれば、博士号レベルでは、その特定分野の最先端を切り開いていくことが求められる。このちがいは、次のようにいえる。修士になるには、教科書に書いてあることや何かの解説をすごいスピードで吸収していかなければならない。それに対して、博士になるためには、修士になるための勉強をする人達が将来読むであろう教科書に載るような"発見"をしたり、問題を"解決"したりする必要がある。将来の教科書に書かれるであろうことを今ここで見つけていくのが、博士課程の学生に要求されていることで、すでに発見済みのことを勉強するのが修士課程の学生。決定的に違う。もちろん、博士のやっていることが将来の教科書に載る大発見だということでは必ずしもない。それでも、修士と博士は、そのぐらい違う。小説を書く作家と、その作家の小説をよく読んでいる読者みたいなものか(えらそうだなあ)。まあでも、理想的にいえば、やっぱりそうだろう。実際、修士号取得はかなり楽だ。

さて、その博士号取得プロセス。まずは、コースワークからだ。