子ども1人に4500万円の借金を押し付けている現状。 この子たちの行く先を明るいものにしなければならない。 |
内閣府の「年次経済財政報告(平成17年)」は、高齢者世代が生涯にわたってどれだけの税金を支払い、どれだけの便益を受けたかを計算しています。それによれば、今の60代は差し引きで約1600万円分の純受益があったことになる。それに対し、今の30代が生涯に受ける便益を計算すると、実に約1700万円のマイナス(支払い超過)です。これから生まれてくる将来世代は多大な国債が残されるので、生涯で約4500万円分の借金返済に追われるという。これは「財政的幼児虐待」ともいわれています。
投票箱をあけると高齢者の票ばかり (財)明るい選挙推進協会のデータ |
たとえば、消費税の税率5%アップで、政府は13.5兆円の追加税収を見込んでいます。消費税は高齢3経費(年金・医療・介護)に使われますが、財務省は、今回は「未来(子ども)への投資」も使途にいれたと宣伝しています。しかし、それはたったの0.7兆円。13.5兆円増税して、たった0.7兆円をもって「未来への投資」といっています。
「子ども手当が...」?。毎年毎年、年金50兆円をバラまくのに比べれば、子ども手当の2兆円など微々たるものです。「いまもらっている年金は若い時に積み立てたものだから...」?。いえいえ、いまの高齢者は、彼らが現役時代に払い込んだ社会保険料の2倍~4倍の年金を受け取っています。しかし、いまの現役世代には増税が待っているので、結局は「払い損」になるはずです。
もう、若さに応じて1票に格差をつけないとやっていけない段階かもしれません。国政選挙はその国のあり方、数十年後の行く末を決める選挙です。その選挙結果の影響を数十年にわたって受ける世代こそが、将来を見通して責任をもって投票する当事者でしょう。今後、50年、60年に渡って日本の将来を担う世代の声が議会に強く反映されるべきです。
余命別選挙制度の作り方
選挙区というと地理的な区分けが想定されています。各地方の選挙区から選出された地域代表を通じて、社会全体の利害を議会に反映させるシステム。しかし、社会全体の利害を汲み取るために、世代ごとに代表を選出してもいいでしょう。0歳~30代の「青年区」、40~50代の「中年区」、60代以上の「老年区」のように分け、世代ごとに代表を選べばよい。そうすれば若者世代の声は「青年区」選出の議員が代表できる。 これは年齢別選挙区というアイディアで井堀利宏・東京大学教授が提案してきた。
私は余命別選挙制度として、各世代選挙区に、その世代の平均余命(あと何年の寿命があるか)に応じて議席(議員数)を配分し、投票権と余命をリンクさせることを提案しています。たとえば、いま25歳の人の平均余命は57年で、55歳の平均余命29年の約2倍。そこで、20代選挙区には議席を多く配分し、その有権者1人当たり議席数が、50代選挙区の2倍になるようにする。若さに応じて1票に格差をつけるわけです。
「1票の格差」はどうなるのだ、という疑念にはこう答えます。移行期を除けば、生まれた年にかかわらず、どの人も生涯を通じて同じだけの投票力を持つので、生涯を通じた「投票価値の平等」は担保されます。また、若者の影響力が過大になるというのも誤解です。彼ら自身もやがては高齢者になるのだから、若者だけに都合の良い刹那的・利己的政策ばかりを支持するとは思えないし、むしろ、孫のいない高齢者のほうが利己的な投票行動に走る可能性のほうが大きいと考えられないでしょうか。
少子高齢化が進み歪んでしまった人口ピラミッドを、余命でウェイトづけしてみましょう。かつて日本が元気だったころの人口ピラミッドを再建できることにお気づきいただけると思います。
日経ビジネスオンラインにフルバージョンを書かせていただきました。そちらでは、「公共財としての子ども」という考え方も紹介しています。http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20110531/220334/
ワールドビジネスサテライト(2012年5月31日放映)の特集でもコメントを紹介していただきました。
http://www.tv-tokyo.co.jp/mv/wbs/feature/post_21365/
私は世代間対立ではなく、本当の意味で共に支えあう社会を強く望んでいます。