手洗いは感染症予防の基本。行動経済学や「ナッジ(行動変容を促すちょっとした仕掛け)」を使って手洗いを促す施策と研究を紹介します。例えばメッセージでは「となりの人は石鹸をちゃんと使って手を洗っていますか?」などが有効。
ここではトイレでの手洗いを促進するためのナッジ9件を紹介します。いずれも、(1)液体石鹸の使用量を測定したり、手洗いを実際に観察したりして、ナッジやポスター・メッセージの効果を推定する点、(2)ポスターなどを掲示しない「統制群(コントロールグループ)」を設けて、そのグループとの差によって、ナッジの効果を推定する点に、特長があります。
1) 床に矢印ステッカーを貼って洗面台に誘導
矢印ステッカーによる洗面台への誘導効果 (Blackwell, et al., 2018) |
延べ19,098名のトイレ利用者の液体石鹸使用量から手洗い頻度を測定し、ナッジの効果を推定したアメリカでの実験。洗面台にスマイリー(ニコちゃん)マークのステッカーと、洗面台へ誘導する矢印のステッカーの効果を測定。床に貼られた矢印ステッカーによって、手洗い頻度が、男性は40%が46%に、女性では66%が76%に増加。
2) 子どもも足跡をたどって手洗い場に行く
Dreibelbis, et al. (2016) "Behavior change without behavior change communication: Nudging handwashing among primary school students in Bangladesh," International Journal of Environmental Research and Public Health, Vol.13, pp.129-135. (論文題名「コミュニケーションを介さない行動変容:バングラデシュの小学生の手洗いへのナッジ」)
トイレを出てからポリタンクに誘導する (Dreibelbis, et al., 2016) |