2024年11月21日

「国立ハンセン病資料館」にゼミ生と行きました

 東村山の「国立ハンセン病資料館」に、ゼミ4年と行きました。とても有意義な学びがあった。


「らい病」に対する過酷な差別は、20世紀の日本では国家政策になりました。「10年で全患者を強制収容して、次の10年で収容所で死んでもらう」つもりの政策で、病気の撲滅ではなく、数万人の患者の撲滅が図られたとのこと。

手錠をかけて貨車で運ぶだとか、「窓のない黒い自動車がやってきて、泣き叫ぶ母をそこへ押し込んで、それで連れ去った」などしてまで強制収容した例もある。

資料館は、収容施設跡にたっており、その納骨堂には「一度収容された者は二度と社会の土を踏むことができず、家族との絆も絶たれ、死後ふるさとに骨を埋めることさえ出来なかった」と刻まれていました。いまは4千人以上の遺骨が納められているそうです。

 病気とは関係のない、断種・中絶手術も半ば強制された。収容所に暮らした女性の証言で、「妊娠が判って婦人科の診察に行きました。すると、『来週の何曜日に堕ろしますから、ご主人の許可をもらってきて下さい』と言われました」と言われたと。治療法もすでに確立していた1970年のこと。

こちらのURLリンクでも証言読めます。

https://www.jsds.org/jsds2008/2008html/s_sugino.htm

 

男性も夫婦になるには断種手術が迫られました。局部を切開し管を切る。[強制収容や劣悪な処遇など]他のことは許せても、断種手術をされたことだけは、あの屈辱だけは絶対に許せない、と映像資料で語る、元患者の男性。外出もできない不自由な生活が一生続く。


 

「国立ハンセン病資料館」は、かつての収容施設(現:国立療養所 多磨全生園)に隣接しています。団体見学を予約すれば映像資料が見られますので、ぜひそちらを視聴してから展示をみるほうがよいでしょう。(各地に13の国立療養所があります)

社会での理不尽な差別や敵意をむき出した攻撃も酷かった。

多磨全生園園長の言葉に、「当園に隣接して国立ハンセン病資料館もありますので、こちらにも足を運んで下さい。私たちが陥りやすい過ち、そして守られるべき人権、多様性を受け入れる寛容な心、などなどを考えさせる時間となることでしょう。」とあり、本当にそのとおりです。

園長の言葉にもある「過ち」。人類はこれまでに、数えきれない過ちをおかし、人を殺し傷つけてきました。そうした過ちは、後世に「理不尽に長年苦しんだ人たちがいた」とだけ触れられます。そもそも、記憶さえされないもののほうが多いかもしれませんね。ただ、そのひとつひとつには、語りつくせぬ塗炭の苦しみがあり、いまを生きる私たち人類の、いわば「業」の深さを感じます。

人権や平和についての「過ち」を示す資料をみる(見せられる)のを嫌がる人もいるでしょう。でも、わざわざ神妙な顔をしたり、教訓じみたことを口にしたりしなくてよいのです。だって、日常茶飯事だから。その程度で動揺しないことですよ。

過去に酷い「過ち」を主導した人もいたし、傍観した人もたくさんいました。私たちが年老いて死ぬときに「過ちをおかしただろうか」と自問し、大丈夫なはずだと安心して自答したいものです。そのためにも、過去の過ちや、それがもたらした痛みを知っておくべきでしょう。

繰り返す過ちの その度 人はただ青い空の青さを知る

 


2024年11月3日

府中刑務所文化祭にゼミ生と

府中刑務所文化祭にゼミ生を連れて、刑務所の中も見学しました。学びの多いイベントでした。
府中刑務所の門が開き、塀の中に

印象に残ったのは、(1)高齢の懲役受刑者が「作業」という名目で、運動やら折り紙でリハビリをしている様子を紹介したビデオ。刑務所というより"老人ホーム"だった。
(2)拘禁刑が創設(懲役・禁固を統廃合)されるとは知りませんでした。刑事収容施設法も第93条で「受刑者に対し、その改善更生及び円滑な社会復帰を図るため必要と認められる場合には、作業を行わせる」と追記されたということ(2025年施行)。いままではただ「作業させる」だったのが、更生が視野に入った。(3)刑務所内の作業場の注意書きが多国語(たぶんアジアの国々の言葉)であったこと。なによりも (4) 更生に携わる法務教官や矯正局の皆さんの使命感に頭が下がりました。

『犯罪は社会の鏡』。社会のあり方、コミュニティや地域の力、家族の愛情、そして、教育政策、所得再分配政策、福祉政策、司法行政。これらの綻びが犯罪となって顕れるともいえます。大学で学び社会の一員となる学生さんたちには、犯罪者は縁遠い人たちかもしれませんが、同じ社会の一員。知っておくべきことでもあると思いました。

子どもに寄り添い、励ます仕事です

法務教官の募集パンフ「子どもに寄り添い励ます仕事です」

全国各地の刑務所で作成された様々なものが売られています

ゼミ生たちが塀の中に入っていきます


法務省のコレワークについて質問する学生さん