2012年3月9日

第8章補論 アイトラッキングの可能性

齊藤誠・中川雅之(編著)『人間行動から考える地震リスクのマネジメント: 新しい社会制度を設計する』勁草書房。第8章(共著)とその補論(単著)を書かせていただきました。

齊藤誠・竹内幹「第8章 耐震マンションを好む人はどこを見ているか:アイトラッカーを用いた研究」、竹内幹「第8章補論 アイトラッキングの可能性」。

第8章補論の冒頭部分を以下引用します。ご興味がおありの方は本書を手にとってみていただければ幸いです。
-----
ここでは,第8章本論で用いたアイトラッキングと,その研究上の意義を整理したい.アイトラッキングとは,視線の動きを捕捉し,人や動物がどこを見ているのかを計測することである.1970年代から学術研究はさかんであるが,近年,ビジネスマーケティングでの応用事例も豊富である.商品陳列,カタログのレイアウト,新聞の見出しや記事,ウェブサイトデザイン,ブランド認知,食品栄養表示,テレビCMなど様々なものを見る人の視線の推移を分析し,その改善に役立てている.ビジネスだけでなく,航空パイロットの操縦法,外科医の技量測定,放射線医師の診断法の分析にも用いられている.
たとえば,ウェブデザインではGoogleのGolden Triangleがよく知られている.Google検索のユーザーがどのように検索結果を見るかを図示している(Nielsen, 2006).ユーザーの視線が左上の検索結果に集中していることが一目瞭然である.
最近のアイトラッキング機器は,ゴーグルをはめる必要がなく,被験者に違和感を与えないので,応用の幅も広がってきた.以下では,眼球運動の基礎や意思決定との関係にふれた上で,アイトラッキングが研究者にとってなぜ必要なのかについて述べたい.

2012年2月4日

第2子誕生で育児休業取得。その関連でトークしました。

第2子が生まれ、産後1ヶ月間に育児休業を取得。それに関連して、3つ「講演」しました。

1) NPO法人ファザーリング・ジャパン 2011年7月26日
特別講演「パパの育休が必要なコレだけの理由」をさせていただきました。父親の育児休業取得こそが、これから進むべき道だと訴えました。そのあと、FJの安藤さん司会でパネルトーク「「男性が育休取得できる社会にするために行政・企業・個人に必要なこと」にでました。

2)Creo(クレオ) 2011年12月4日
講演「パパの育児休業が必要な理由、実現への戦略」として、お話させていただきました。実際に育児休業をとろうと考えている男性が何名か聞きにきていらっしゃいました。ぜひ、すこしずつ職場や社会の固定観念を変えていきましょう。連続講座のタイトルは『今、なぜ大切!?「男性の子育て」』で、「育休取得を検討中の男性と夫の育休を臨む妻を対象に、制度の概要など取得の要点を体験者がアドバイス。」という趣旨でした。CreoさんとNPOファザーリング・ジャパンと杉並区教育委員会との共催。

3)国立市公民館 2012年2月4日
公民館主催の『連続講座 「働きマン」か「イクメン」か、男のワーク・ライフ・バランスを考える』の第2回で「父親の育児が日本を救う! ~育休体験をもとに~」として、お話しました。

多くのお父さんが、子育ての初動(新生児のとき)から育児にとりくめる、そして、とりくむようになる。それが当たり前になる日が、きっと来るでしょう。参考図書としては、育休の意義(そして、大変さ)を独自の視点で書いてくれた山田正人さんの『経産省の山田課長補佐、ただいま育休中』がおすすめ。子育て・育児休業や共働きに、興味ある方にはぜひ読んでほしいと思っています。

2011年12月15日

ESA@厦門大学で学会発表しました

中国アモイで開催されたESAのアジア太平洋大会で発表して来ました。
「自強不息 上於至善」の碑
同様のものが学内に複数ありました
 今回は、2011年2月に実施した時間選好に関する実験の結果を発表・宣伝してきました。時間割引関数をグラフに描くと、それが逆S字型になることを検証した実験です。
 会場は、厦門大学。厦門市は、台湾のちょうど向かい側で、成田からも直行便があって、約4時間の距離です。厦門大学キャンパスの真ん中には、大きな池があって、そのほとりでは、たくさんの学生さんたちが英語の音読練習をしていました。英語シャドウイングの学生さんたちのすぐ近くにあるのが、「自強不息 上於至善」のスローガン。大学の正門前にはマクドナルドがあるのだけど、スローガンをみると、ああ、共産圏にきたのだと実感しますね。
 
ここは、実験経済学に重点をおいているらしく、実験室を新しくつくって経済実験の研究をサポートしています。私はこの学会でプログラム委員でもあったので、次回のアジア太平洋大会の算段をつけてきました。東京で2013年2月に開催予定と決まりました。ほんとは、この2012年大会を東京で開催することを検討していたのですが、原発の状況も全く先が読めなかったので、東京開催は諦めていたところでした。次は大丈夫であることを願います。

2011年12月10日

行動経済学会に息子と。討論・座長・理事会。

第5回行動経済学会に3歳息子といってきました。翌週に中国出張があり、妻に新生児と子どもだけを残しておくわけにいかず、今回は同伴。会場の関西学院大学までシッターさんに来てもらい、会期中2日間は、休憩室やキャンパスで遊んでもらいました。

私は発表はしなかったのですが、討論・座長・理事、といった役を果たしました。今年度、行動経済学会の理事会メンバーになりまして、どうぞよろしくお願いいたします。

ちょうど息子が『大阪うまいもんの歌』を覚えたので、歌詞に登場する名所を見せてあげました。「♪ 大阪にはうまいもん、いっぱいあるんやで~。か~に道楽、くいだおれ~、吉本新喜劇~(なんでやねん!)♪」を見せてあげようと、行ってきました。くいだおれ人形に抱きつき、かに道楽にも納得。吉本は観られなかったのですが、吉本スクールの若い人達が忘年会お笑いをしていたので、それを見学。雰囲気がやっぱり面白かったようで、満足気に見ていました。ありがとう、大阪。新幹線にのって10時前には帰宅。

2011年11月21日

HQ 一橋の授業

HQという一橋大学の広報誌が「一橋の授業」を連載していて、今回は経済学部の講義を7ページにわたって紹介。そのうち半ページで私の「基礎ミクロ経済学」を載せてもらいました。



「ミクロ経済学とは、個人や企業などの主体がどのように経済的意思決定をするのか分析する学問です。20歳の学生のみなさんにそれを実感してもらいたい」(竹内准教授)

だから、講義ではさまざまなエピソードが登場する。

2011年10月30日

日独先端科学シンポジウムで講演

第8回「日独先端科学シンポジウム」がホテルニューオータニで開催され、私は社会科学分野の日本側スピーカーとして講演しました。

ドイツ・フンボルト財団と日本学術振興会の共催で、毎年開かれているもの。開催地は日独交互で、今年は日本で開催されました。ドイツ大使館でレセプションや、浅草観光と、ソーシャルイベントもしっかりあって若手科学者の交流を目的としているようです。
3日間午前午後の終日開催で、6つの合同セッションがもたれました。分野は、物理・化学・生物学・地球科学・計算機・社会科学とあるようです。私は社会科学分野の日本側スピーカーとして「時間選好」の概念と、最近発見した「未来バイアス」について話しました。

ふだん聴くことのないいわゆる"理系"の研究成果や発表に触れられたことが一番の勉強になりました。統制実験をしない・できないで発展してきた経済学の特異性も改めて実感。理系プレゼンから学ぶも多かったです。

妻が第2子出産直後だったので、3歳息子をおいていけず、初日レセプション・浅草観光・最終日ディナーには息子を連れて行きました(他の時間帯にはシッターさんに来てもらいました)。ランチには帰宅して新生児を沐浴したりと大忙しでしたが、ニューオータニの日本庭園を見渡すラウンジでの朝食はすばらしかったです。息子が指さしているのは、色鮮やかな大きな鯉たち。戦国時代の加藤清正が造り、江戸時代は井伊家、維新後は伏見宮家と引き継がれてきた庭園だそうです。

2011年6月6日

日経ビジネスオンライン 年齢別選挙区について書きました

気鋭の論点に、世代間不公平と選挙制度について書きました。

「世代会計」は、各世代が生涯にわたってどれだけの税金を支払い、どれだけの便益を政府から受けたかを計算しています。それによれば:
今の60代は差し引きで約1600万円分の純受益があった計算。それに対し、今の30代が生涯に受ける便益を計算すると、実に約1700万円のマイナス(支払い超過)です。これから生まれてくる将来世代は多大な国債が残されるので、生涯で約4500万円分の借金返済に追われるといわれます。

日本の子どもの7人に1人は貧困状態にあり、実は、OECD30カ国のなかでも子どもの貧困率は12番目に高いのです。月額13000円程度の子ども手当はバラマキだと批判される一方で、「世代間の助け合い」という美名のもと、賦課方式の年金制度は高齢者への多額のバラマキを続けています。そのツケは現役世代が負うにもかかわらず。なぜ、このように歪むのかといえば、選挙制度と人口構成が歪んでいるからでしょう。

育児支援や教育は社会にとって極めて重要な投資ですが、その社会の意思決定が高齢者寄りになってしまった結果、少子化対策は完全に手遅れとなりました。第2次ベビーブーマーたちが30代後半となりましたが、第3次ベビーブームは全く起きませんでした。もはや、選挙制度に手をつけるほかないのでしょうか? つづきは→ http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20110531/220334/



2011年4月14日

准教授になりました

准教授(大学院経済学研究科)に昇任させる
教育職○級○○号棒とする
任期の定めのない職員となった


しっかりがんばります。これからもどうぞよろしくお願いいたします。

2011年2月24日

「耐震マンションを評価する人はどこを見ているか」

一橋大学政策フォーラム『等身大の人間行動を考えた地震リスクマネジメントのすすめ』(会場:東京国際フォーラム)に登壇させていただきました。

コーディネーターは齊藤誠教授。中川雅之教授、佐藤主光教授につづいて、発表させていただきました。「耐震性と居住性のトレードオフについて」というタイトルで、“日々の住み心地は、まさかの時の安全に優先されているのでしょうか? 最新鋭の実験機器(アイトラッカー)で快適さと安全性の間で揺れ動く心の内をそっとのぞいてみます。”というリードをつけていただきました。

報告として日経新聞夕刊に全面広告をだしています(5月23日)。

2011年1月31日

日経ビジネス「気鋭の論点 マンションと行動経済学-耐震性に付加価値あり」

日経ビジネス2011年1月31日号の「気鋭の論点」というコラムで「マンションと行動経済学-耐震性に付加価値あり」を書かせていただきました。

人の視線(どこを見ているか)を計測する装置を使ってみました。人の選択結果・行動を観察するだけではわかりにくいのが、意思決定プロセス:どうしてそういう選択をするに至ったのか、です。それでも、視線というのは、そうした意思決定プロセスとは切ってもきれない関係にあります。好きなものを見続けてしまうだけでなく、見続けたものを好きになってしまうという関係も知られています。そうした知見を、耐震マンションの評価に応用してみました。


2011年1月9日

「自主的に取り組めない」大学生たち

今の学生をみていて、つくづく納得。以下の文章は、雑誌記事や書籍からの引用です。それぞれ、いつ頃に発表されたものだと思いますか。(解答は最下部・コメントにあります)


Q1: 受験技術の勉強の結果、大学での学問にむかない頭脳構造ができてしまうことは、よくいわれることだ。「与えられたことはやるが、自発的に勉強できない」「自分で考えるクセがついていない」「新しいことにとびついていく気力がなくなっている」。こうした批判は、いたるところで出される。

Q2: 東大法学部のある教授の話だが、学生のあいだで大教室での多人数講義への不満の声が高いので少人数講義を一部設けたら、開講後しばらくして多人数講義のほうへ流れた学生が少なくなかったという。多人数講義のほうは、種々の学説を解説し、段階づけ、序論-結論まで全部"教えてもらえる"が、少人数では、問題を提示され、自分で考えるように仕向けられるので、答えがハッキリ出してもらえず、それが"不安だ"というのである。

Q3: 学生の自主性を尊重してきた●●大学は、近頃の学生は無気力で、無神経で、大学が今まで学生に与えてきた自由をもてあましていることを発見した。学生にいろんなクラブ活動を組織するようにまかせれば、クラブ活動はぜんぜん実現しないし、学生は大して興味をもっていないので、今まで学生の興味の方向に沿ってきめられていた履修課程も、今では通用しなくなった。…このような現象を、…世論は、教育者が「きびしくない」ためだときめつけた。

Q4: この10年近く、ゼミナールで大学問題を取り上げている。「4年生に、卒業の間際、感想文を書かせているんです。すると、なんのために大学に在籍していたのかよくわからんというものがだんだん多くなってきている。そのくせ、ゼミにはちゃんと出ているんだが。そして、彼らの行き先は、ほとんどねばりと才覚があればといわれるセールスなんだ。暴論かも知れないが、そんな学生にまともに価値論の講義をする気になれない」

Q5: 人間関係での相手と同化することも、絶対でなくなった。深い次元での交際は、互いに傷つく可能性がある。豊かな物質に恵まれ、好んで緊張や葛藤を味う必要がない時代である。それを人間関係でわざわざ味うのは愚かというものだろう。... おとなしいが、さっぱり熱気が感じられない、言えばやるが、黙っていると、ちっとも進んではしない、という若者評

Q6: これからの子供たちに必要となるのは、いかに社会が変化しようと、自分で課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する資質や能力であり、また、自らを律しつつ、他人とともに協調し、他人を思いやる心や感動する心など、豊かな人間性である...。


Q1の解答:1967年。『朝日ジャーナル』1967年4月9日号掲載の宇佐美承「大学生の大量留年はなぜ起きる?」 当時の20歳は、2011年にはもう64歳!  つづきはコメント欄です


「自主性のない若者たち」は、いつの時代にも、形をかえて主張されてきたようです。そして、2010年代でも、「ゆとり世代はだめだ」といわれるでしょう。しかし、それは、大人側の言い訳。どの時代の年長者にも、「若者はやる気がない」と見えるようです。「ゆとりだから、どうしようもない」は無責任かもしれません。きちんと責任をもって教育しなくてはいけません。そして、ゆとり世代当事者(若者)たちの言い訳にもなります。「どうせ、おれらゆとり世代だから」などという甘えはやめてもらいたいです。

2010年12月26日

子ども・子育て新システム(保育園制度改革)のきれいごと

保育園制度がもうすぐ「新システム」に改革されるかもしれない。私の思うところを整理したい。

この改革は「質より量」で待機児童問題に対応すること。政府の借金は返済不可能なレベルで、厳しい財政難。こうした中、他の予算を削ってまで、保育園のための予算を増やすのは難しいでしょう。要するに、今ある保育園の質を下げないかぎり、保育園の量(定員)を増やすのはほぼ不可能です。

私がひっかかるのは、この新システムに賛成する人たちが、「質の議論を避けている」こと。その1点です。

2010年12月1日

Associate Editor(編集委員)になりました

Economic InquiryのAssociate Editorになりました。Economic Inquiry(エコノミック・インクワイアリー)は、1962年創刊の経済学学術誌(もちろん"査読"付き)で、経済学の幅広いトピックに関して論文を載せています。特に、研究テーマにとらわれず、専門分野外の経済学者にも様々な研究テーマ内容がわかることを重視しているとのこと。これまでにも9人のノーベル経済学賞受賞者が論文を載せています。

Associate Editor は、日本語に訳すと、編集委員でしょうか。トップにEditor(編集長、主幹)が1人いて、Co-Editor(共編者)が16人、さらに Associate Editorが16人います。
編集長のプレストンマカフィー(Preston McAfee)大先生からメールで依頼があったので、すぐに返事をしました。トップ50に入る経済学学術誌で edit に携わっている日本人は、ほんとうに数人を数えるほど。光栄ですね。

2010年10月の最新号をみると、なるほど、
 直接民主制の所得再分配への影響:スイスでの実証
 経済成長と政教分離:フランスの場合
 成績を甘くつけることの本当のコスト(1960年代からの検証)
といった学際的トピックがあります。

表紙をめくると、Associate Editors リストに「Kan Takeuchi / Hitotsubashi University」と書かれている。先週、一橋大学でトークをしてくださった、Hamermesh先生も「いいね!Department(上司、経済学部)も喜んでくれたでしょ!」と言ってました。

編集長のマカフィーさんは、現在 Yahoo!リサーチのチーフエコノミスト。2007年までカリフォルニア工科大学で経済学の教授をしていたのですが、ヤフーに移籍。インターネットと経済学の結びつきは、近年特に強くなりました。2007年にGoogleがカリフォルニア大学バークレー校のヴァリアン教授を引き抜いたのに対して、ヤフーが招聘したのがこの人(関連ニュース:エコノミストを重宝するシリコン・バレー~事業開発や機能拡充に学者を採用

彼がメールに添付してきたのが、「EDIFYING EDITING(PDF版)」というエッセイでした。

2010年9月13日

『社会科学における実験の意義』 サマースクールで講演

実験社会科学 サマースクール 2010』で、一番はじめのレクチャーを担当させていただきました。タイトルは、「社会科学における実験の意義」と大風呂敷を広げたので、今回は、壊血病の話をすることにしました。壊血病はビタミンCが不足すると発症し、血管がぼろぼろになってあっという間に死んでしまう恐ろしい病気です。


大航海時代に、長い航海の間に船員の多くがこの病気にかかったそうです。ただし、オランダの東インド会社所属の船乗りたちは、新鮮な野菜が壊血病に効くことを経験的に知っていました。

2010年9月12日

第14回実験社会科学カンファレンス 運営責任者


一橋大学でカンファレンスを開催しました。運営は私で、主催は、文部科学省特定領域研究『実験社会科学 ―実験が切り開く21世紀の社会科学―』 です。

発表内容などは、カンファレンスのウェブサイトをごらんください。
http://www.econ.hit-u.ac.jp/~kan/expss2010/index.html

【数当てゲーム(p-beauty contest)】
せっかくたくさんの人が集まるので、参加ご登録いただいたみなさんで、余興のゲームを行いました。

【ゲームの概要】
0~100までのなかから、数をひとつ選んでください。下に書いてあるルールにしたがって、当選番号が決まります。あなたが選んだ数が、他の人の選んだ数とくらべて、その当選番号にいちばん近い数であれば、あなたに賞品を差し上げます。

2010年8月11日

時間選好の論文が Games and Economic Behaviorに

時間選好の実験論文が、Games and Economic Behavior に載ります。タイトルは"Non-parametric test of time consistency: Present bias and future bias"です。

私の論文は、ほぼすべての時間選好モデルが暗黙に前提としている条件を指摘して、その解決方法を提案したもの。さらに、非合理的な行動としてよく知られている「現在バイアス」だけでなく、「"未来"バイアス」もある可能性を実験によって確かめ、時間割引関数が逆S字カーブを描くこと示した(ええと、画期的なものだろう)。内容を以下に紹介します。

2010年7月2日

若者=少数派。投票にいこう

若者よ、選挙に行こう(投票しよう)。下の円グラフは、前回の参議院選挙で選挙に行った人の年齢を調べた結果を表している。
実際に投票した人たち(選挙に行った人たち)に占める若者20代の割合は、わずかに8%。それに比べて、50代・60代以上の部分をみてほしい。42%+21%=63%だ。投票した人の3人に2人は、50歳以上ということ。

JALの経営破綻のときに、OBの企業年金をカットするかどうかで一悶着あったのを思い出す。国の年金についても、同じようなことは起きるだろうか。

2010年6月22日

コペンハーゲン Risk and Time Preferences

コペンハーゲンのビジネススクールの「リスク選好・時間選好カンファレンス」に行ってきた。この分野で実験をしている人たちが多く集まっていたので、いろいろと勉強になる。カンファレンス出席者が、論文を書いた時のレフェリーになるかもしれないので、どういう傾向のことに関心があるのかをシェアするのはとても重要なこと。

コペンハーゲン駅前には、あの世界最古のテーマパークというチボリ公園(写真)がある。日本にもかつて岡山県倉敷駅前に「倉敷チボリ公園」という、この本家チボリと"提携"していたものがあった(1997~2008年)。赤字の三セクみたさに倉敷チボリを訪れたのだけど、そのときは「やれやれ」としか思わなかった。それが今回、この本家チボリのゆったりとした時間が流れる落ち着いた雰囲気を体感して、なるほどこういうものを作りたかったのだなと少し納得。

さて、私は、主催者たちが以前に考案した実験方法についてコメントしていたもので、それに感謝するためかディナーに呼んでくれた。その実験方法を、彼らは incentive compatible (回答者がウソをつかない)ものとしていたのだけど、実はそれはちょっと違っていて、そのことを教えてあげた次第。私も当初、彼らの手法を使わせてもらおうとしたのがけど、よおく考えてみると、ウソをつくことで回答者が得をする反例に気づいた。その反例を教えてあげたので、その御礼ということかな、ディナー美味しかったです、ごちそうさま。

学会会期中、早稲田の実験経済学は1回おやすみ(後日補講)にして、その間は、Machina三角形についての宿題をやってもらっていました。ちょうど、ディナーに、Machina先生もいたので一緒に写真に写ってもらいました。

2010年6月13日

博士号をとるステップ2:コースワークを終えて

前回の続き。
博士(Ph.D.、「ピーエイチディー」)になるときの手続きは次の通り。
Course work → preliminary (comprehensive) exam → 3rd year paper → committee → proposal defense → oral defense → doctoral thesis (dissertation).

3rd year paper: コースワークを終えた3年目に論文を1本書くことになっている。3年目だから、日本でいえばD1にあたる段階。このときにそろそろアドバイザー(指導教官)を決めなくてはならない。どの先生に指導教官になってもらうかは、博士課程にあって一番重要なことだ。これは、どんなに強調しても、強調しすぎることができないくらい重要だ。このドラマについてはまたいつか別の機会に書こう。

cognate: コグネイト、大学のポリシーとして専門以外の科目の講義も勉強しなくてはならないことがある。

2010年6月4日

博士号をとるステップ:修士号と博士号

とても懐かしい。おもわず買ってしまった。このクッキーを、3年前の5月のディフェンスのときに買ってもらったのを思い出した。ディフェンスというのは博士論文の口述試験のこと。博士号取得の最終段階で必要なステップだ。

博士論文についての発表だから、2時間以上になるのは当たり前。審査員となっていただく先生方のおなかをすかせてはいけないので、飲み物といろいろなスナックを用意して備えた。そのスナックのひとつが、写真のクッキーだ。これをみて3年前のことが思い出された。2007年の夏に博士号を取得 → 妻の妊娠 → LAと東京の往復生活 → 一橋に就職 → 日本に戻る → 出産・育児と、振り返る暇もないまま3年が過ぎた。博士論文もパブリッシュしたことだし、忘れてしまう前に、ミシガン大学での博士号取得プロセスを振り返っておこうと思う。

博士(Ph.D.、「ピーエイチディー」)になるときの手続きは次の通り。
Course work → preliminary (comprehensive) exam → 3rd year paper → committee → proposal defense → oral defense → doctoral thesis (dissertation).

大学を卒業すると、学士号(BA)という学位を取得できる。大学の卒業証書には、あなたは学士になったんだということが書かれているはず。それで、そのあと大学院に行ってとれるのが、修士号(MA、エムエー)だ。通常は2年間、ある特定の専門分野についてみっちり勉強することで取得できる。ビジネススクールでとれるMBAは、Master of Business Administration の頭文字で、ビジネス分野(経営学)での修士号という意味だ。

私が取得したPh.D.(博士号)は、そのさらに先。修士号がある特定分野のことを詳しく知っていることの証であれば、博士号レベルでは、その特定分野の最先端を切り開いていくことが求められる。このちがいは、次のようにいえる。修士になるには、教科書に書いてあることや何かの解説をすごいスピードで吸収していかなければならない。それに対して、博士になるためには、修士になるための勉強をする人達が将来読むであろう教科書に載るような"発見"をしたり、問題を"解決"したりする必要がある。将来の教科書に書かれるであろうことを今ここで見つけていくのが、博士課程の学生に要求されていることで、すでに発見済みのことを勉強するのが修士課程の学生。決定的に違う。もちろん、博士のやっていることが将来の教科書に載る大発見だということでは必ずしもない。それでも、修士と博士は、そのぐらい違う。小説を書く作家と、その作家の小説をよく読んでいる読者みたいなものか(えらそうだなあ)。まあでも、理想的にいえば、やっぱりそうだろう。実際、修士号取得はかなり楽だ。

さて、その博士号取得プロセス。まずは、コースワークからだ。