2013年7月9日

2050年 若者がテロリストになる日(シナリオ原案:最悪の想定)


財団法人日本再建イニシアティブ『日本最悪のシナリオ 9つの死角』新潮社、2013年。のなかの「人口衰弱」の原案を担当しました。シナリオ原案の一部をここにすこし紹介いたします。

(決して起きてはならないという意味で最悪の想定をしたフィクションです。また各数値・試算や議論については、学術的な裏付けなしにフィクションとして使っておりますことご了承ください)

2010年代、第2次ベビーブーマーが40歳を迎え出産可能年齢を越えた。だが、第3次ベビーブームは到来しなかった、少子化対策は失敗したのだった。そして、このまま少子高齢化がすすみ、2050年には総人口の4割が高齢者になる。医療や介護などの社会保障費は現役世代に重くのしかかり、多額の年金給付をまかなうために社会保険料は上がり続けた。高齢者世代のための年金・医療・介護制度といった“大盤振舞”は、その財源もないまま膨張し続け、若者世代には1人当たり5000万円を超える大きな借金が残された。重税に苦しむ若者世代と、その税で老後を暮らす高齢者世代との間には、大きな世代間格差がうまれた。2000年代にすでに指摘されていたこの格差問題は、1970年代生まれの第2次ベビーブーマーが後期高齢者となる2050年にそのピークを迎える。

しかし、高齢者が圧倒的多数を占めるそのとき、1人1票を原則とした選挙制度はそうした高齢者向け社会保障の膨張とその負担を若者世代におしつける政治に歯止めをかけることはできなかった。そして、絶望した若者たちの一部に狂信的思想がひろまる。最悪のシナリオは、1930年代の「11殺」をとなえた血盟団事件や226事件、1970年代の日本赤軍が引き起こした一連のテロ事件や三菱重工爆破事件、1990年代の地下鉄サリン事件の再来だ。世代間格差を解消できない政治への絶望と怒りがつのる2050年には、世代間平等をとなえる革命思想が若者の心をとらえることになる。



高齢化と経済の衰退
「時代は変わった」。経済学者の後藤四郎はつぶやいた。来春、麻布高校を卒業する後藤の次男の六郎が、海外の大学に進学すると言い出したのである。最近では都内の進学校出身の高校生が欧米や中国の大学に進むことは、さほど珍しくなくなった。ところが六郎が進学を希望するのはアフリカのチュニジアにある北アフリカ総合大学だという。カルタゴの遺跡くらいの知識しかなかった後藤に対し、六郎はこう言った。「お父さんはどうせ、アフリカの大学で何を学べる?とか思っているんでしょう。言っとくけどチュニジアはアフリカで一番平和な国だし、日本と違って経済成長してる。人口が増えているし、何より若者が多いんだよ」。
 若者が多い、と言われて後藤は黙るしかなかった。日本の総人口は2050年現在、9187万人[1]。高齢化が進み、65歳以上の高齢者は約3800万人、総人口の4割を超える。20歳から65歳までの現役世代は4393万人で半分に満たないし、六郎たちのような20歳未満の若者は全体の1割だけだ。「僕は日本でマイノリティーとして生きていくのはいやなんだ」。父親に反抗しているというより、単なる事実という感じで六郎はそう言った。

 実際、今の日本で若者は少数派だ。街を歩いていると高齢者ばかりが目につく。通勤時間帯に赤坂見附から地下鉄銀座線に乗っても、座れるという事実に、四郎は先日驚いたばかりだ。一方、お昼前後に都バスに乗ると、シルバーパスをかざして無料で乗ってくる高齢者が列をなしている。これでは財政が破綻するのも当然だ、と四郎は考えている。
 マクロ経済学を専攻する後藤は東京大学で教鞭をとる。少子化による18歳人口減少の影響は、東大にも及んでいる。留学生を呼び込むため英語で受けられる講義が大半を占め、後藤自身も北京・上海・バンコク・ジャカルタなどアジアの主要都市を回る大学説明会に毎年1カ月程度を費やす。私立大学に至っては、教員の7割強を入れ替え、英語による講義やインターネットによる講義配信を行っている。
ただ、10年ほど前から、東大ではなく中国沿岸部の有名大学を留学先に選ぶ学生も増えてきた。というのも、人口の減少や社会保障の負担の増加により、日本の経済的地位は低下しつづけているからだ。21世紀に入ってGDP世界第2位の座を中国に譲ってから、日本の存在感はうすれるばかり。GDP2030年にはついにインドに抜かれ、この50年代にはブラジルに追いつかれるといわれている。
 その日の午後2時、四郎は霞ヶ関にいた。委員を務める経済財政諮問会議に出席するためだ。議題は消費税率引き上げについて。現在、消費税率は20%だが[2]、社会保障や年金給付への国庫負担などがかさみ、政府の借金は4000兆円に達している[3]
財務省は「プライマリーバランスを取るためには、3年以内にさらに5%の消費税率引き上げが必要」と試算しているが、ここ60年、プライマリーバランスが達成された試しはない。
 2010年代から消費税は徐々に引き上げられてきたが、逆進性が問題視されたこと、年金生活者からのロビイングがあり「消費税減免シルバーパス」が発行されることになった。65歳以上の日本国民が店頭でモノやサービスを購入した際、このパスを見せると、消費税を払わなくても良いのである。所得税、消費税、社会保険料、介護保険料など、この頃には負担は全て勤労世代に押し付けられるようになっていた。

2050年1月、首相官邸に怪文書が届く
それは、年金制度と介護保険制度の廃止、それらに充てられている約130兆円の予算を35歳以下の雇用対策と子育て支援に充てることを求める内容の怪文書だった。1週間以内に関連の法改正を行わない場合は「現代版アンシャン・レジームによって不当利益を得ている集団に報復を行う」と記されていた。この手の誇大妄想にもとづく脅迫状まがいの怪文書は1日に何通も届くため、保存されるだけで、特に対応はとられなかった。

 翌日、都内で大規模な爆破事件が起きる。場所は港区白金台にある高齢者向け分譲マンション。152戸中、9割にあたる130戸が全壊する大惨事で入居者の8割に当たる127名が死亡。
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警視庁は高齢者を狙う連続テロとみなし、捜査チームを結成する。ほぼ全壊した高齢者向け分譲マンションの現場からは、建物の随所に仕掛けられた時限爆破装置と、実行犯と思しき人物の焼死体が発見された。検視の結果、実行犯はこのマンションと提携する介護サービス会社のスタッフの28歳男性Aであることが判明する。
 次の日の昼、高齢者の「社会的入院」が多い世田谷区の病院で停電が発生。地震など災害時にも作動した自家発電装置も機能せず、3時間にわたり電源喪失。呼吸器が停止するなどの影響で、患者40名が亡くなった。
 警視庁は事件の後すぐ、病院の清掃スタッフの32歳女性Bを全国に指名手配。Bは朝、出勤してきた後、停電の直後から行方が分からなくなっていた。高齢者を狙った事件が相次いだことから、警視庁では港区のマンション爆破事件と世田谷区の病院停電事件の間に何らかの関係があるのではないかと見ている。チームは病院爆破の実行犯Aの携帯電話(爆破の際に破損)の通信履歴から、Aが頻繁に閲覧していたホームページを見つける。そこには「維新断行・尊若討老」と記されていた。120年ちかく前に軍事クーデター未遂を起こした青年将校らが掲げていた「昭和維新断行・尊皇討奸」からとったものと思われる。
 この日の夜、首相官邸から警視庁に連絡が入る。2日前に届いた怪文書が、高齢者をターゲットにしたテロを示唆していたことを指摘される。ただ、この時点で怪文書と都内で起きた2つの事件の関連はまだ明らかになっていなかった。

2013年3月10日

経済実験を体験できる未来館の「波乱万丈!おかね道」

おもしろい!に徹底的にこだわった展示でした 
「監修協力」させていただけて幸せです
あなたは自分が公平な人間だと思っていますか? 本当にそうかどうかを確かめる"実験"が経済学であるんです。

日本科学未来館(お台場)の特別企画展「波乱万丈!おかね道」では、「あなたを映し出す10の実験」とあるように、お金にまつわる実験に参加し質問に答えることで、自分の意外な面を発見できます。(展示は6月24日まで)

「監修協力」に私の名前をいれていただいたので、4歳の息子と一緒に内覧会に行きました。大人と子どもの経済観念の違いを実感できる場面や、アニメやコントを活用した映像展示もあり、お子さんと一緒でも楽しめます。

例えばある実験では、あなたが「公平な人」か「自分の利益を最優先する人」かが分かります。ひとりでも楽しめますが、仲の良い友人やカップルで一緒に行き、実験結果を見せ合うと盛り上がるでしょう。

私の講義では、うまい棒ゲームで
"限界効用逓減"を説明します。
毎年、大人買いです。
私は一橋大学と早稲田大学で"実験経済学"を教えて今年で4年目です。そこで一番大事にしてきたことは、この企画展の趣旨にも通ずる「経済理論を、身を持って体験してもらう」ことです。講義では、紙に書かれた数字をみて考えるゲームだけでなく、うまい棒を使った実験などなるべくモノを使って実演してきました。教科書を読んだり板書を写すだけでなく、一度実験に参加してもらうと、実感をともなって経済理論を理解してくれるようです(「早稲田大学で話題の講義!」)。

講義は大学の教室で完結するので、経済実験を体験してもらえるのは、350人弱が限界です。 一方、こちらの企画展は、大学生だけでなく、社会人や中高生、小学生など毎日数百人が参加でき、累計参加者は数万人規模が期待できます。

展示を見てすごいな!と思うのは、見せ方の工夫です。まず、ポスターやウェブサイトに使われているイラストがセンス抜群に良く目を惹きます。ほかにも「難しそう」ではなく「面白そう」と思わせる、匠の技がたくさん。
"ミライ銀行"のATMが第1の展示
ここからスタートです

「おかね道手帖」 これを手に会場を
まわり、10の実験での自分の行動を
記録します。教訓・解説も記載。
会場入り口にはATMを模した実験装置があり、うちの4歳児は駆け寄っていましたし、通帳風の冊子(写真)に実験結果を記録するのが洒落ています。科学展示の専門家やデザイナーさん、展示物を作る専門家のみなさんの力が結集されて、経済実験の面白さが伝わる形になっています。



リスク認知の"歪み"をあぶりだす
実験は、カジノっぽい演出で。
監修協力者一覧に
「竹内幹」を見つけました。
時間選好:どっちを選ぶか、まずは
2つの入り口のどちらかに入る。

ちなみに、『中央公論』の4月号では「身の丈の経済学:お金との付き合い方から社会を考える」と題した特集が掲載されています。この中で、大竹文雄先生(企画展の総合監修)、山岸俊男先生、春野雅彦先生と一緒に私も寄稿をさせていただきました(テーマは「高齢者と将来世代、どちらを重視するか?」)。併せて御覧いただけたら嬉しいです。

2013年2月2日

実験経済学:論文のトレンド(京都大学でトーク)

実験経済学の論文のトレンド(および研究のデューデリジェンス)について、京都大学でトークいたしました。京都大学が経済実験室を新規開設した記念に2日間のワークショップが開かれ、15人がトーク。私は、そのオープニングに60分話す機会をいただきました。どうもありがとうございます。
 前半40分は「論文のトレンド」について、後半20分は「研究のデューデリジェンス」について。前半の発表スライドは以下でご覧いただきます。解説は以下に。



まず、実験経済学の論文数の動向について5年毎に棒グラフにしてみました(下図の左)。EconLitでSubject欄に"experiments"を含む論文の数をまとめました(まれにモンテカルロ実験といった例外もあるので、概数です)。特に2000年台で伸びています。実験経済学の祖 Vernon Smith先生のノーベル賞受賞が2002年ですから、実験経済学のプレゼンスが大きくなったのは2000年台前半の出来事です。主要掲載誌別に数えてみて、2001~05年と06年~10年を比較したのが、下図の右。

後半の5年で掲載論文数がずいぶん増えましたが、注目すべきは、AER掲載数が4倍に増えていること。たしかにAERに実験経済の論文がずいぶん載るようになったとおもいます。あとは、JEBO(J. of Economic Behavior and Organization)に実験経済の論文が大量に載るようになりました。JEBOのassociate editorをみると、実験経済学を専門とする経済学者がかなり多いです。

 Charles Noussair教授の講演スライドにどんなトピックの実験論文が載ったかというデータがあったので、それを円グラフ(左の図)にしてNoussair教授のまとめを紹介・解説。「社会選好」が36%, 「市場実験」が24%, 「意思決定」が14%, あとは「ゲーム」が21%という感じだそうです。
最後に、ところで実験論文1本あたり、だいたいどのくらいの被験者数になっているのかをAERでみてみました。多いものは800人のサンプルサイズになっていたり、少ないものだと100人未満。やはり理論部分で貢献があれば、実験パートがおまけ程度でも大丈夫。逆に、理論部分に新規性がない場合は、実験でいろいろなトリートメントを用意して比較することでインパクトを出さないとパブリッシュにはいたらないという様子がいみてとれました。
 後半のデューデリについては、1)被験者保護の手続き(IRB)、2)捏造を防止・疑われないための手続き、3)利益相反確認の手続き、について、事例などを紹介させていただきました。

京大周辺には子どもの頃から何度か訪れていましたが、京大キャンパス内は初めて。曽祖父が法学部長をしていた頃の校舎が残っていて驚き。いまの法学部校舎はちょうど彼が東北大から京大に移籍した頃に建てられたそうで、研究室の場所がわかればいずれみてみたいものと思う。となりが節分で有名な吉田神社で、お祭りをやっていました。

2012年12月12日

余命別選挙制度(余命投票方式)・世代間格差

竹内は「余命別選挙制度」を提唱しています。これは、余命に応じて選挙区分け・議席配分をすることによって、投票権を余命に応じて重みをつけるという制度です。つまり若い人の1票を、高齢者の1票より重くできるのです。少子高齢化・人口減少の社会では、余命別選挙制度にしないと、世代間格差が広がってしまうと私は危惧しています。

子ども1人に4500万円の借金を押し付けている現状。
この子たちの行く先を明るいものにしなければならない。
現在の高齢者世代は、年金や医療保険を通じて政府から多くの給付を受けていますが、その財源は国の借金(国債)や現役世代が支払う税金です。そのツケは若者世代やこれから生まれてくる将来世代に膨大な国債残高として残されていくのです。

内閣府の「年次経済財政報告(平成17年)」は、高齢者世代が生涯にわたってどれだけの税金を支払い、どれだけの便益を受けたかを計算しています。それによれば、今の60代は差し引きで約1600万円分の純受益があったことになる。それに対し、今の30代が生涯に受ける便益を計算すると、実に約1700万円のマイナス(支払い超過)です。これから生まれてくる将来世代は多大な国債が残されるので、生涯で約4500万円分の借金返済に追われるという。これは「財政的幼児虐待」ともいわれています。

投票箱をあけると高齢者の票ばかり
(財)明るい選挙推進協会のデータ
急激な少子高齢化により歪んでしまった人口構成のもとでは、選挙で多くの票を投ずる高齢者に有利な政策が選ばれがちです。いわゆる「シルバー民主主義」です。国政選挙での投票箱を開けてみると、20代が投じた票はわずか9%で、50歳以上の票が過半数といった事態(左図)で、これは必ずしも若者が投票しないからだ、というわけではなくそもそも人口構成がそのくらい歪んでしまっているのです。

たとえば、消費税の税率5%アップで、政府は13.5兆円の追加税収を見込んでいます。消費税は高齢3経費(年金・医療・介護)に使われますが、財務省は、今回は「未来(子ども)への投資」も使途にいれたと宣伝しています。しかし、それはたったの0.7兆円。13.5兆円増税して、たった0.7兆円をもって「未来への投資」といっています。

「子ども手当が...」?。毎年毎年、年金50兆円をバラまくのに比べれば、子ども手当の2兆円など微々たるものです。「いまもらっている年金は若い時に積み立てたものだから...」?。いえいえ、いまの高齢者は、彼らが現役時代に払い込んだ社会保険料の2倍~4倍の年金を受け取っています。しかし、いまの現役世代には増税が待っているので、結局は「払い損」になるはずです。

もう、若さに応じて1票に格差をつけないとやっていけない段階かもしれません。国政選挙はその国のあり方、数十年後の行く末を決める選挙です。その選挙結果の影響を数十年にわたって受ける世代こそが、将来を見通して責任をもって投票する当事者でしょう。今後、50年、60年に渡って日本の将来を担う世代の声が議会に強く反映されるべきです。

余命別選挙制度の作り方
選挙区というと地理的な区分けが想定されています。各地方の選挙区から選出された地域代表を通じて、社会全体の利害を議会に反映させるシステム。しかし、社会全体の利害を汲み取るために、世代ごとに代表を選出してもいいでしょう。0歳~30代の「青年区」、40~50代の「中年区」、60代以上の「老年区」のように分け、世代ごとに代表を選べばよい。そうすれば若者世代の声は「青年区」選出の議員が代表できる。 これは年齢別選挙区というアイディアで井堀利宏・東京大学教授が提案してきた。

私は余命別選挙制度として、各世代選挙区に、その世代の平均余命(あと何年の寿命があるか)に応じて議席(議員数)を配分し、投票権と余命をリンクさせることを提案しています。たとえば、いま25歳の人の平均余命は57年で、55歳の平均余命29年の約2倍。そこで、20代選挙区には議席を多く配分し、その有権者1人当たり議席数が、50代選挙区の2倍になるようにする。若さに応じて1票に格差をつけるわけです。

「1票の格差」はどうなるのだ、という疑念にはこう答えます。移行期を除けば、生まれた年にかかわらず、どの人も生涯を通じて同じだけの投票力を持つので、生涯を通じた「投票価値の平等」は担保されます。また、若者の影響力が過大になるというのも誤解です。彼ら自身もやがては高齢者になるのだから、若者だけに都合の良い刹那的・利己的政策ばかりを支持するとは思えないし、むしろ、孫のいない高齢者のほうが利己的な投票行動に走る可能性のほうが大きいと考えられないでしょうか。

少子高齢化が進み歪んでしまった人口ピラミッドを、余命でウェイトづけしてみましょう。かつて日本が元気だったころの人口ピラミッドを再建できることにお気づきいただけると思います。


日経ビジネスオンラインにフルバージョンを書かせていただきました。そちらでは、「公共財としての子ども」という考え方も紹介しています。http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20110531/220334/

ワールドビジネスサテライト(2012年5月31日放映)の特集でもコメントを紹介していただきました。
http://www.tv-tokyo.co.jp/mv/wbs/feature/post_21365/

私は世代間対立ではなく、本当の意味で共に支えあう社会を強く望んでいます。

2012年6月25日

星海社「ザ・ジセダイ教官」インタビュー


星海社さん「ザ・ジセダイ教官 知は最高学府にある」にインタビューしていただきました。

早稲田大学で話題の講義! 
竹内幹先生に「実験経済学」を学ぶ

早稲田大学で話題の人気講義があると聞いた。講義名は「実験経済学」。経済学と言えば「データと数式」というイメージだが「実験」をするとはどういうことか? 早速、教鞭をとっている一橋大学の竹内幹先生にお話を伺いに行った。

つづきはコチラ→
【前半】http://ji-sedai.jp/special/kyokan/TakeuchiKan_01.html
【後半】http://ji-sedai.jp/special/kyokan/TakeuchiKan_02.html

2012年6月24日

「規約主義」:経済学は精巧なフィクションにすぎないのか(日本経済学会での討論)

「経済学は実在するのか"道具"にすぎないのか」というタイトルで話しました。日本経済学会2012年度春季大会(北海道大学)の特別セッションで、加藤淳子先生(東京大学)が「脳神経科学実験で人間の社会行動の何がわかるか」で発表なさったあとの討論をさせていただきました。

まず、神経経済学の問題関心・発見の例として、心の理論(Theory of Mind)と数当てゲームにおける推論深度の相関を紹介しました。本題はここからです。
 脳の活動を観察する神経経済学では、「コンテクストによって同じ行動(選択)によって意味が異なる」と言われることもありますが、経済学の「顕示選好理論(revealed preference)」アプローチからすれば、「so what(だから、なに)?」となりうる。なぜかというと...。経済学における意思決定の理論は、観察可能な選択結果(意思決定の結果の部分だけ)に立脚した理論であって、意思決定プロセスそのものを直接扱いはしないからです。そうした立場にたてば、「同じ行動でも意味が異なる」というのは本質でない、と。(こうきくと「過程を無視しちゃ意味ないだろう」と批判したくなりますが、これにはこれなりの理屈と意義があります。)
『科学と仮説』
つまり、選択結果が整合的に説明できればいい---できさえすればいい---という態度・立場ともなります。経済理論は、選択結果を整合的に説明できさえすればよい。したがって、整合性が損なわれないかぎり、「合理的経済人の仮定」だとか「効用最大化」とか、そういった経済理論の前提は必ずしも真である必要はないのです。
 経済理論は、それ自体が本当に世界のあるがままを記述しているわけではなく、我々人間が認識を深めるや議論をするための便宜的な「道具」にすぎない。思い出すのは、ポアンカレが『科学と仮説』のなかで述べた次のことばです(岩波文庫版p.76):

幾何学の公理は先天的総合判断でもないし、実験的事実でもない。それは規約である。

平行線が交わらないユークリッド幾何学だろうが、平行線など引けない非ユークリッド幾何学だろうが、どちらも正しい。もちろん、前者のほうが我々人間には極めてもっともらしいのですが、本当に正しいとは言い切れない。つまり、平行線公準は、ただの規約(取り決め)にすぎず、その正しさを云々することは無意味である。平行線があるという前提(規約)で話をすすめるか、あるいは、平行線は引けないという前提(規約)で話をすすめるか、どちらかを選べばいいだけだというのです。科学の多くは、このように選択が可能な規約のうち、もっともらしいものを選んで、それにのっとって理論を構築しているのだという考え。

「経済学の公理は先天的総合判断でもないし、実験的事実でもない。それは規約である。」
それでは経済学は真であるか、という問を何と思考すべきであろうか。[だが、]この問は何も意義を有しない。」
ポアンカレ『科学と仮説』をもじって引用。(幾何学→経済学)
同じように、「経済学の公理は先天的総合判断でもないし、実験的事実でもない。それは規約にすぎない。」といえるはずです。経済理論は本当の実体経済についての科学ではなくて、ある規約にのっとったひとつの壮大な物語だということ。その規約のひとつがたとえば「完全競争」の仮定でしょう。完全競争市場など存在しない、という批判に対しては、「いやこれはあくまで規約であって、仮にそうならば(as if)、どういったことが予想されるかを考えているだけだ」ということができます。
 幾何学ならばまだしも、社会科学で、それも経済政策といった人々の生活に関わりの深い学問分野で、「経済学は規約主義的である」といいきるのも、やや無責任だと私は思います。経済理論を学問として真剣に勉強していれば、誰もが一度は抱く疑問でしょう。ただ、人の意思決定プロセスは不可知なのだから、そのように割り切らざるをえないところがあったわけです。

規約主義をひっくりかえせるか
ただし、神経経済学の研究が明らかにしてきたように、選択プロセスについての神経基盤(neural basis)がみつかるとなれば、話は別です。選択プロセスが「規約」ではなく、実在するというのなら、経済学は規約主義をひっくりかえして、観察された現象については謙虚に向き合うべきだし、同時に、実在する科学理論だともっと自信をもっていいと思います。
 スライドではもう1点、経済学における「精密な計測」の意義を事例をもとに強調しました。それはまた別の機会に。

2012年5月21日

赤ちゃんはおんぶ お兄ちゃんはお話

妻が仕事で夜外出していたので、2人を寝付かせ。0歳娘を背中におんぶしながら、この日読んだのは『エルマーのぼうけん』です。絵本をみるだけでなく、最近はお話をきいて楽しむようになってきました。

トラに囲まれて怖くなったエルマーが、チューインガムをトラにあげ、「ずっと噛んでいると緑色になるよ」といって逃げ切るシーン。この日、特に息子が気に入ったエピソードです。自分も子どもの頃に楽しんだ物語を、息子も喜んでくれる。子どもと過ごす幸せを感じるひとときですね。

娘は、おんぶでよく寝ます。二人目なので、赤ちゃんにとって心地よい姿勢や揺れのリズムが、自然にとれるようになってきました。そのおかげで、おんぶをすると気持ちよさそうに寝てくれます。

ちなみに娘は、私と息子のやり取りを眺めるのが大好きで、私達2人の寸劇のようなごっこ遊びを見ては、足をバタバタさせて大喜びしてます。とても楽しいです。

2012年3月9日

第8章補論 アイトラッキングの可能性

齊藤誠・中川雅之(編著)『人間行動から考える地震リスクのマネジメント: 新しい社会制度を設計する』勁草書房。第8章(共著)とその補論(単著)を書かせていただきました。

齊藤誠・竹内幹「第8章 耐震マンションを好む人はどこを見ているか:アイトラッカーを用いた研究」、竹内幹「第8章補論 アイトラッキングの可能性」。

第8章補論の冒頭部分を以下引用します。ご興味がおありの方は本書を手にとってみていただければ幸いです。
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ここでは,第8章本論で用いたアイトラッキングと,その研究上の意義を整理したい.アイトラッキングとは,視線の動きを捕捉し,人や動物がどこを見ているのかを計測することである.1970年代から学術研究はさかんであるが,近年,ビジネスマーケティングでの応用事例も豊富である.商品陳列,カタログのレイアウト,新聞の見出しや記事,ウェブサイトデザイン,ブランド認知,食品栄養表示,テレビCMなど様々なものを見る人の視線の推移を分析し,その改善に役立てている.ビジネスだけでなく,航空パイロットの操縦法,外科医の技量測定,放射線医師の診断法の分析にも用いられている.
たとえば,ウェブデザインではGoogleのGolden Triangleがよく知られている.Google検索のユーザーがどのように検索結果を見るかを図示している(Nielsen, 2006).ユーザーの視線が左上の検索結果に集中していることが一目瞭然である.
最近のアイトラッキング機器は,ゴーグルをはめる必要がなく,被験者に違和感を与えないので,応用の幅も広がってきた.以下では,眼球運動の基礎や意思決定との関係にふれた上で,アイトラッキングが研究者にとってなぜ必要なのかについて述べたい.

2012年2月4日

第2子誕生で育児休業取得。その関連でトークしました。

第2子が生まれ、産後1ヶ月間に育児休業を取得。それに関連して、3つ「講演」しました。

1) NPO法人ファザーリング・ジャパン 2011年7月26日
特別講演「パパの育休が必要なコレだけの理由」をさせていただきました。父親の育児休業取得こそが、これから進むべき道だと訴えました。そのあと、FJの安藤さん司会でパネルトーク「「男性が育休取得できる社会にするために行政・企業・個人に必要なこと」にでました。

2)Creo(クレオ) 2011年12月4日
講演「パパの育児休業が必要な理由、実現への戦略」として、お話させていただきました。実際に育児休業をとろうと考えている男性が何名か聞きにきていらっしゃいました。ぜひ、すこしずつ職場や社会の固定観念を変えていきましょう。連続講座のタイトルは『今、なぜ大切!?「男性の子育て」』で、「育休取得を検討中の男性と夫の育休を臨む妻を対象に、制度の概要など取得の要点を体験者がアドバイス。」という趣旨でした。CreoさんとNPOファザーリング・ジャパンと杉並区教育委員会との共催。

3)国立市公民館 2012年2月4日
公民館主催の『連続講座 「働きマン」か「イクメン」か、男のワーク・ライフ・バランスを考える』の第2回で「父親の育児が日本を救う! ~育休体験をもとに~」として、お話しました。

多くのお父さんが、子育ての初動(新生児のとき)から育児にとりくめる、そして、とりくむようになる。それが当たり前になる日が、きっと来るでしょう。参考図書としては、育休の意義(そして、大変さ)を独自の視点で書いてくれた山田正人さんの『経産省の山田課長補佐、ただいま育休中』がおすすめ。子育て・育児休業や共働きに、興味ある方にはぜひ読んでほしいと思っています。

2011年12月15日

ESA@厦門大学で学会発表しました

中国アモイで開催されたESAのアジア太平洋大会で発表して来ました。
「自強不息 上於至善」の碑
同様のものが学内に複数ありました
 今回は、2011年2月に実施した時間選好に関する実験の結果を発表・宣伝してきました。時間割引関数をグラフに描くと、それが逆S字型になることを検証した実験です。
 会場は、厦門大学。厦門市は、台湾のちょうど向かい側で、成田からも直行便があって、約4時間の距離です。厦門大学キャンパスの真ん中には、大きな池があって、そのほとりでは、たくさんの学生さんたちが英語の音読練習をしていました。英語シャドウイングの学生さんたちのすぐ近くにあるのが、「自強不息 上於至善」のスローガン。大学の正門前にはマクドナルドがあるのだけど、スローガンをみると、ああ、共産圏にきたのだと実感しますね。
 
ここは、実験経済学に重点をおいているらしく、実験室を新しくつくって経済実験の研究をサポートしています。私はこの学会でプログラム委員でもあったので、次回のアジア太平洋大会の算段をつけてきました。東京で2013年2月に開催予定と決まりました。ほんとは、この2012年大会を東京で開催することを検討していたのですが、原発の状況も全く先が読めなかったので、東京開催は諦めていたところでした。次は大丈夫であることを願います。

2011年12月10日

行動経済学会に息子と。討論・座長・理事会。

第5回行動経済学会に3歳息子といってきました。翌週に中国出張があり、妻に新生児と子どもだけを残しておくわけにいかず、今回は同伴。会場の関西学院大学までシッターさんに来てもらい、会期中2日間は、休憩室やキャンパスで遊んでもらいました。

私は発表はしなかったのですが、討論・座長・理事、といった役を果たしました。今年度、行動経済学会の理事会メンバーになりまして、どうぞよろしくお願いいたします。

ちょうど息子が『大阪うまいもんの歌』を覚えたので、歌詞に登場する名所を見せてあげました。「♪ 大阪にはうまいもん、いっぱいあるんやで~。か~に道楽、くいだおれ~、吉本新喜劇~(なんでやねん!)♪」を見せてあげようと、行ってきました。くいだおれ人形に抱きつき、かに道楽にも納得。吉本は観られなかったのですが、吉本スクールの若い人達が忘年会お笑いをしていたので、それを見学。雰囲気がやっぱり面白かったようで、満足気に見ていました。ありがとう、大阪。新幹線にのって10時前には帰宅。

2011年11月21日

HQ 一橋の授業

HQという一橋大学の広報誌が「一橋の授業」を連載していて、今回は経済学部の講義を7ページにわたって紹介。そのうち半ページで私の「基礎ミクロ経済学」を載せてもらいました。



「ミクロ経済学とは、個人や企業などの主体がどのように経済的意思決定をするのか分析する学問です。20歳の学生のみなさんにそれを実感してもらいたい」(竹内准教授)

だから、講義ではさまざまなエピソードが登場する。

2011年10月30日

日独先端科学シンポジウムで講演

第8回「日独先端科学シンポジウム」がホテルニューオータニで開催され、私は社会科学分野の日本側スピーカーとして講演しました。

ドイツ・フンボルト財団と日本学術振興会の共催で、毎年開かれているもの。開催地は日独交互で、今年は日本で開催されました。ドイツ大使館でレセプションや、浅草観光と、ソーシャルイベントもしっかりあって若手科学者の交流を目的としているようです。
3日間午前午後の終日開催で、6つの合同セッションがもたれました。分野は、物理・化学・生物学・地球科学・計算機・社会科学とあるようです。私は社会科学分野の日本側スピーカーとして「時間選好」の概念と、最近発見した「未来バイアス」について話しました。

ふだん聴くことのないいわゆる"理系"の研究成果や発表に触れられたことが一番の勉強になりました。統制実験をしない・できないで発展してきた経済学の特異性も改めて実感。理系プレゼンから学ぶも多かったです。

妻が第2子出産直後だったので、3歳息子をおいていけず、初日レセプション・浅草観光・最終日ディナーには息子を連れて行きました(他の時間帯にはシッターさんに来てもらいました)。ランチには帰宅して新生児を沐浴したりと大忙しでしたが、ニューオータニの日本庭園を見渡すラウンジでの朝食はすばらしかったです。息子が指さしているのは、色鮮やかな大きな鯉たち。戦国時代の加藤清正が造り、江戸時代は井伊家、維新後は伏見宮家と引き継がれてきた庭園だそうです。

2011年6月6日

日経ビジネスオンライン 年齢別選挙区について書きました

気鋭の論点に、世代間不公平と選挙制度について書きました。

「世代会計」は、各世代が生涯にわたってどれだけの税金を支払い、どれだけの便益を政府から受けたかを計算しています。それによれば:
今の60代は差し引きで約1600万円分の純受益があった計算。それに対し、今の30代が生涯に受ける便益を計算すると、実に約1700万円のマイナス(支払い超過)です。これから生まれてくる将来世代は多大な国債が残されるので、生涯で約4500万円分の借金返済に追われるといわれます。

日本の子どもの7人に1人は貧困状態にあり、実は、OECD30カ国のなかでも子どもの貧困率は12番目に高いのです。月額13000円程度の子ども手当はバラマキだと批判される一方で、「世代間の助け合い」という美名のもと、賦課方式の年金制度は高齢者への多額のバラマキを続けています。そのツケは現役世代が負うにもかかわらず。なぜ、このように歪むのかといえば、選挙制度と人口構成が歪んでいるからでしょう。

育児支援や教育は社会にとって極めて重要な投資ですが、その社会の意思決定が高齢者寄りになってしまった結果、少子化対策は完全に手遅れとなりました。第2次ベビーブーマーたちが30代後半となりましたが、第3次ベビーブームは全く起きませんでした。もはや、選挙制度に手をつけるほかないのでしょうか? つづきは→ http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20110531/220334/



2011年4月14日

准教授になりました

准教授(大学院経済学研究科)に昇任させる
教育職○級○○号棒とする
任期の定めのない職員となった


しっかりがんばります。これからもどうぞよろしくお願いいたします。

2011年2月24日

「耐震マンションを評価する人はどこを見ているか」

一橋大学政策フォーラム『等身大の人間行動を考えた地震リスクマネジメントのすすめ』(会場:東京国際フォーラム)に登壇させていただきました。

コーディネーターは齊藤誠教授。中川雅之教授、佐藤主光教授につづいて、発表させていただきました。「耐震性と居住性のトレードオフについて」というタイトルで、“日々の住み心地は、まさかの時の安全に優先されているのでしょうか? 最新鋭の実験機器(アイトラッカー)で快適さと安全性の間で揺れ動く心の内をそっとのぞいてみます。”というリードをつけていただきました。

報告として日経新聞夕刊に全面広告をだしています(5月23日)。

2011年1月31日

日経ビジネス「気鋭の論点 マンションと行動経済学-耐震性に付加価値あり」

日経ビジネス2011年1月31日号の「気鋭の論点」というコラムで「マンションと行動経済学-耐震性に付加価値あり」を書かせていただきました。

人の視線(どこを見ているか)を計測する装置を使ってみました。人の選択結果・行動を観察するだけではわかりにくいのが、意思決定プロセス:どうしてそういう選択をするに至ったのか、です。それでも、視線というのは、そうした意思決定プロセスとは切ってもきれない関係にあります。好きなものを見続けてしまうだけでなく、見続けたものを好きになってしまうという関係も知られています。そうした知見を、耐震マンションの評価に応用してみました。


2011年1月9日

「自主的に取り組めない」大学生たち

今の学生をみていて、つくづく納得。以下の文章は、雑誌記事や書籍からの引用です。それぞれ、いつ頃に発表されたものだと思いますか。(解答は最下部・コメントにあります)


Q1: 受験技術の勉強の結果、大学での学問にむかない頭脳構造ができてしまうことは、よくいわれることだ。「与えられたことはやるが、自発的に勉強できない」「自分で考えるクセがついていない」「新しいことにとびついていく気力がなくなっている」。こうした批判は、いたるところで出される。

Q2: 東大法学部のある教授の話だが、学生のあいだで大教室での多人数講義への不満の声が高いので少人数講義を一部設けたら、開講後しばらくして多人数講義のほうへ流れた学生が少なくなかったという。多人数講義のほうは、種々の学説を解説し、段階づけ、序論-結論まで全部"教えてもらえる"が、少人数では、問題を提示され、自分で考えるように仕向けられるので、答えがハッキリ出してもらえず、それが"不安だ"というのである。

Q3: 学生の自主性を尊重してきた●●大学は、近頃の学生は無気力で、無神経で、大学が今まで学生に与えてきた自由をもてあましていることを発見した。学生にいろんなクラブ活動を組織するようにまかせれば、クラブ活動はぜんぜん実現しないし、学生は大して興味をもっていないので、今まで学生の興味の方向に沿ってきめられていた履修課程も、今では通用しなくなった。…このような現象を、…世論は、教育者が「きびしくない」ためだときめつけた。

Q4: この10年近く、ゼミナールで大学問題を取り上げている。「4年生に、卒業の間際、感想文を書かせているんです。すると、なんのために大学に在籍していたのかよくわからんというものがだんだん多くなってきている。そのくせ、ゼミにはちゃんと出ているんだが。そして、彼らの行き先は、ほとんどねばりと才覚があればといわれるセールスなんだ。暴論かも知れないが、そんな学生にまともに価値論の講義をする気になれない」

Q5: 人間関係での相手と同化することも、絶対でなくなった。深い次元での交際は、互いに傷つく可能性がある。豊かな物質に恵まれ、好んで緊張や葛藤を味う必要がない時代である。それを人間関係でわざわざ味うのは愚かというものだろう。... おとなしいが、さっぱり熱気が感じられない、言えばやるが、黙っていると、ちっとも進んではしない、という若者評

Q6: これからの子供たちに必要となるのは、いかに社会が変化しようと、自分で課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する資質や能力であり、また、自らを律しつつ、他人とともに協調し、他人を思いやる心や感動する心など、豊かな人間性である...。


Q1の解答:1967年。『朝日ジャーナル』1967年4月9日号掲載の宇佐美承「大学生の大量留年はなぜ起きる?」 当時の20歳は、2011年にはもう64歳!  つづきはコメント欄です


「自主性のない若者たち」は、いつの時代にも、形をかえて主張されてきたようです。そして、2010年代でも、「ゆとり世代はだめだ」といわれるでしょう。しかし、それは、大人側の言い訳。どの時代の年長者にも、「若者はやる気がない」と見えるようです。「ゆとりだから、どうしようもない」は無責任かもしれません。きちんと責任をもって教育しなくてはいけません。そして、ゆとり世代当事者(若者)たちの言い訳にもなります。「どうせ、おれらゆとり世代だから」などという甘えはやめてもらいたいです。

2010年12月26日

子ども・子育て新システム(保育園制度改革)のきれいごと

保育園制度がもうすぐ「新システム」に改革されるかもしれない。私の思うところを整理したい。

この改革は「質より量」で待機児童問題に対応すること。政府の借金は返済不可能なレベルで、厳しい財政難。こうした中、他の予算を削ってまで、保育園のための予算を増やすのは難しいでしょう。要するに、今ある保育園の質を下げないかぎり、保育園の量(定員)を増やすのはほぼ不可能です。

私がひっかかるのは、この新システムに賛成する人たちが、「質の議論を避けている」こと。その1点です。

2010年12月1日

Associate Editor(編集委員)になりました

Economic InquiryのAssociate Editorになりました。Economic Inquiry(エコノミック・インクワイアリー)は、1962年創刊の経済学学術誌(もちろん"査読"付き)で、経済学の幅広いトピックに関して論文を載せています。特に、研究テーマにとらわれず、専門分野外の経済学者にも様々な研究テーマ内容がわかることを重視しているとのこと。これまでにも9人のノーベル経済学賞受賞者が論文を載せています。

Associate Editor は、日本語に訳すと、編集委員でしょうか。トップにEditor(編集長、主幹)が1人いて、Co-Editor(共編者)が16人、さらに Associate Editorが16人います。
編集長のプレストンマカフィー(Preston McAfee)大先生からメールで依頼があったので、すぐに返事をしました。トップ50に入る経済学学術誌で edit に携わっている日本人は、ほんとうに数人を数えるほど。光栄ですね。

2010年10月の最新号をみると、なるほど、
 直接民主制の所得再分配への影響:スイスでの実証
 経済成長と政教分離:フランスの場合
 成績を甘くつけることの本当のコスト(1960年代からの検証)
といった学際的トピックがあります。

表紙をめくると、Associate Editors リストに「Kan Takeuchi / Hitotsubashi University」と書かれている。先週、一橋大学でトークをしてくださった、Hamermesh先生も「いいね!Department(上司、経済学部)も喜んでくれたでしょ!」と言ってました。

編集長のマカフィーさんは、現在 Yahoo!リサーチのチーフエコノミスト。2007年までカリフォルニア工科大学で経済学の教授をしていたのですが、ヤフーに移籍。インターネットと経済学の結びつきは、近年特に強くなりました。2007年にGoogleがカリフォルニア大学バークレー校のヴァリアン教授を引き抜いたのに対して、ヤフーが招聘したのがこの人(関連ニュース:エコノミストを重宝するシリコン・バレー~事業開発や機能拡充に学者を採用

彼がメールに添付してきたのが、「EDIFYING EDITING(PDF版)」というエッセイでした。