2021年3月20日

卒論TIPS集:卒業論文の校正添削でのコメントまとめ。

卒論を添削していて、いつもコメントしていることをまとめてみました。
特に、「I. 文章の書き方について」は、絶対にわかっているべきにもかかわらず、初めてレポートなるものを書く学生さんがあまりわかっていない部分だと思います。卒論のように長いものを書く場合は「V. ワードの便利な使い方について」も役にたつと思います。

卒業論文TIPS集

2021年1月8日
竹内幹

I. 文章の書き方について(最重要!)

  • 原則1:文は、客観的事実やデータ、または、自分の主観的意見や見解のどちらかで構成される。客観と主観を明確に区別しながら書くこと。
  • 原則2:「主観」を客観的に表現することで、その「主観」が読み手に伝わるのを理想とすること。
  1. 事実は、そのすべてにデータや出典をつけるつもりで書くこと。「AはBだ」と言い切るときには、その心得として「Xによれば、AはBだそうだ」あるいは「私の独自調査によれば、AはBだ」という形態をとるべきである。それがなければ、主観的意見(感想)か不確かな伝聞にすぎない。自分以外の人の主観的意見は「鈴木(1997)は、~~と主張した。」という客観的事実として記述すればよい。
  2. 「~とされる」「~といわれる」表現は、その~部分を誰がいったかわからないので使わないこと。代わりに「~だ。」と断言する。断言することで不安になるのは、調査が足りないから。情報ソースをしっかりそろえること。
  3. 客観的事実を記述するべきところに、主観的評価をすべりこませるような修飾はなるべく使わない。
    (1) 「~が多い」や「~が高い」といった形容詞表現は、その評価が主観によるので、単独ではなるべく使わない
    代わりに、あるいは補足として、客観的な数字やデータを出典付きで使うこと。そのデータを読み手が知った時に、「なるほど、『~が多いというのは本当なのかもしれない」と主観的に納得してもらえることを目指す
    例えば、「■■社は〇〇市場においてゆるぎない地位を占めている」は、ゆるぎないという主観的表現があるのでよくないし、はっきりいえば、そのせいで下品な文になっています。代わりに例えば、「〇〇市場における年間売上高順位では1991年から2002年まで××社が首位にあったが、2003年以降現在に至るまで■■社が首位にある。またその売上高シェアも2008年以降50%を下回っていない(データ出典)。」と書くとすこし客観的になる。「ゆるぎない」はこういうことでいいですか? ちゃんと説明できるはずですよね。
    (2) 「きわめて~だ」「明らかに~だ」「非常に~だ」といった形容動詞表現は、その評価が特に主観的になるので使わない。
    (3) 「前代未聞」、「空前絶後」などの派手な四字熟語も使わない。「ゆるぎない地位」だとか「~が叫ばれる現代」、「~~といっても過言ではない。」といった比喩表現や慣用句はきわめて下品。「~なのだ。」も同じように不要な表現であるので、使わない。

  4. 1段落1メッセージを心がける。1メッセージに1段落を使う。そのメッセージはトピックセンテンスの1文に集約される。トピックセンテンスは、段落冒頭に書かれることがほとんどだ。段落内の文章はそのトピックセンテンスについての補足説明という位置づけになる。したがって、トピックセンテンスだけを抜き書きすれば、あらすじがわかるような構成にすること。

  5. コロケーションに気をつける。単語には対となるきまった動詞があるので、それを使うこと。わかりやすい例でいえば、「雨は降る」のであって、「雨が落ちる」とはいわない。ふだんからよく使う単語であればこうした間違いはしないが、正確性を重視する説明文を読みなれていない人が論文を書くと、こうした間違いをおかすようである。「印象を行う」「突出して低くなる」のような誤りをこれまでにたくさん見てきました。

  6. しっくりくる言葉や言い回しが見つからないときは、実は、十分な説明をしないまま複数のことを1文に詰め込みすぎていることが多いという印象を私はもっている。
     例えば、「ゲームをプレイするときの集中力の低下傾向の変化は~」のように、節や単語だけで説明しようとしないで、丁寧に2文か3文を書いてまずは状況を説明して、それから主張したいことを記述すること。

II. 著作権、「引用」や孫引きについて

  1. 著作権侵害をしないこと。
    (1)盗用しない、パクらない。他人の著作物(他人が書いた文章やフレーズ、発言、良いアイディア、気の利いた言い回し等)を、①出典表記をしないで、②転載や転記をすること、あるいは、少し書き換える等して使用することは、違法行為です。絶対にしないこと。少しだけ書き換えれば良いというのは通用しません。自分があたかもやったかのように装うことは、むしろ悪質です。

    (2)正しく引用すること。どこがあなた自身の言葉で、どこが引用(転記)なのかを明確に区別できるような引用をすること。出典表記があっても、正しく引用していなければ、それも違法行為となりえます。例えば、長すぎる引用は著作権侵害にあたる場合もあるようです。他人の労力にただのりするような行為を慎みましょう。

  2. 引用文をメインにして論文を構成しないこと。出典表記があり、正しく引用されていたとしても、引用を継ぎ接ぎしてできた文章はあなた自身のオリジナルな論述にはなりません。あなた自身のオリジナルの記述を主として、どうしても必要なところだけを従として引用すること。
     例えば、地球の四季を知らない人に「春夏秋冬」について簡単に説明してみてくださいと言われたら、あなたはオリジナルの言葉で説明できるはずです。ちょっとやってみてください、
     それなりにうまくできますよね? それはあなたが四季についてよく知っているからです。四季のことをよく知らない人が仮にいたとすれば、おそらく、百科事典やwikiなどの記述を切り貼りして、四季とはこういうことだと知ったかぶりをする他ないでしょう。つまり、論文を書くのであれば、自分のオリジナルの言葉で言い表せるくらいに、そのことについて知識を深める必要があります。これが「あなた自身のオリジナルの記述を主として」という意味です。
     でも、記述をさらに詳しくしようと試みて、例えば、いま住んでいる場所の平均気温の情報や、行政上の定義などを記述に加えたいと思ったときには、引用が必要となるでしょう。あるいは、春が文学作品のなかで重要なイベントとして扱われているとあなたがオリジナルな記述として主張し、そのために、文学作品で実際に春がどのように描かれているのかを例示したいときには、その文学作品の該当箇所を正しく引用する必要が出てきます。こういう場合が、「どうしても必要なところだけを従として引用する」ことになります。

  3. 孫引きはしない。原典を入手して確認することを原則とします。例えば、『ミルの自由論を読む』という本に「ミルは、「○○××である」と述べ、~~を是としている」という文をみて、あなたが『自由論』を読みもしないで、ミルも「○○××である」と述べていると書くのはズルです。仮に『ミルの自由論を読む』を参考文献に挙げていても、ズルです。

III. 体裁について(よくある誤字・誤用を順不同で)

以下の箇条書きの注意点を読んでも、まったく同じ誤りをおかす人が多いです。ひとつひとつ、理解してから自分の文章をチェックしてください。
  1. 「図1.1 卒論の種別」といった図のキャプションは、図の直下につける。
  2. 「表1.2 記述統計表」のような表のキャプションは、表の上に。最近は変わりつつもあるようだが、図表のキャプションの付け方は依然これがアカデミアの基本である。筆者自身は図のキャプションは図の上につけるほうがわかりやすいと思っていますが、型破りするほどでないはずです。
  3. 図には、本文を読まなくても、その大まかな内容と図の主張がわかる詳細なNotesや註釈を付けること。経済学の論文では図に註釈をまったくつけないこともあるが、よくないカルチャーなのでまねすべきでないと筆者は思っています。
  4. 半角と全角とを混合させないで、どちらかに統一すること。
    (1) 数字の全角は「1985年」、半角は「1985年」。
    (2) 引用符の全角は「“”」、半角は「””」。
    (3) アルファベットの全角は「ABC」、半角は「ABC」。
    (4) スペースの全角は「 」、半角は「 」。

  5. 「開く引用符」と「閉じる引用符」を正しく使いわけること。両方とも閉じるになっている誤用をよく見かけます。フォントによって見分けがつかない場合もあるが、開くほうは66のような形で、閉じるほうは99のように見える。
  6. 日本語で脚注番号の挿入位置は句点の直前である。句点の直後にするのは誤用。英語ならばピリオドの直後に空白をいれずに挿入する。
  7. 文末に()で註釈をつけない(このような例外も時としてあるなどと書かない)。カッコをとり、本文の一部として自信をもって記述するか、脚注にいれる。あるいは、本筋からはずれた註釈ならば削除する。
  8. 文末に文献を参照するのであれば、このようにする(Takeuchi, 2011)。この場合()内は文章の一部なので、句点はカッコの後につける。「このようにする。(Takeuchi, 2011)この場合」とするのは誤り。
  9. 脚注での文の末尾にも「。」や「.」をつける。忘れる人が少なくないです。
  10. 数式も文の一部なので、数式で行が終わり、直後から新しい文が始まるようなケースでは式の直後に「.」をうつ。直後から文が継続する場合は、式の末尾に「,」をうつことも多い。この原則は、数式が独立した行の中央部に書かれているようなケース、つまり、次のような式の書き方のときも通用する、
     u(x) = log(x).
    前の文は「log(x)」で終わっているので、直後にピリオドが必要。
  11. カンマやピリオドの直後には半角スペースを入れること。英語の授業で習わないのか、これを忘れる人が多い印象。
  12. 「et al.」と書く、斜体でなくともよいがピリオドを省略はしない。最後のピリオドは名前の一部みたいなものなので直後にカンマがくるときはカンマの直前の空白はいらない。「et. al.」「etal.」も間違い。エタールのように読み、英語でいえば“and others”、日本語では「たち」「ら」の意。
  13. ページ番号で、見開いた場合に表示されるのは、2kと2k+1 の組であって、2k-1と2kではない。つまり、横書きであれば、左側が偶数で右側が奇数になるし、縦書きであれば、右側が偶数で左側が奇数になる。
  14. ページ番号は、タイトル頁を開始番号iとして設定するが、表示はしない。第1章がはじまる直前までのまえがき等では、は ii, iii, iv… と続く。第1章から1, 2, 3, 4… と続く。学術書を参考にすること。MSワードでページ番号の種類を変えたい場合には「セクション区切り」を使えばよい。
  15. 1文字だけ行頭にあって、すぐに改行となるような体裁にはしない。表現等を変えたり文字数を増減したりして調整する。
    」のような体裁にならないよう文字数などを調整すること。
  16. 1行だけページトップにあって、すぐに改ページとなるような体裁にしない。
  17. ページ最下部に、段落小見出しだけがあり、それに続く文章は次ページ冒頭から始まるような体裁にならないように編集すること。MSワードであれば「スタイル」を正しく設定することで回避できるはずです。

IV. 参考文献(References)の書き方について

本質的でないところだが、最も簡単に粗探しができてしまうところが参考文献表記である。本質的でないが、こんなところで誤記があるような論文は、中身もきっと怪しいと判断されうるだろう。書き方については、いろいろなところに解説があると思うので、ここでは詳説しない。
  1. 既存の論文等の参考文献表記を参考に、一字一句まねる。カンマなどを勝手に省略しない。これができない人は数式展開や統計分析でも必要な手順を勝手に省略していたり誤用していたりするかもしれないと私などは感じてしまう。
  2. 一貫性と整合性をもって表記する。一貫性がないのは、例えば、あるエントリーでは最終著者の前に「&」をつかったのに、別のところでは「and」であるようなこと。他には、あるエントリーでは、ファーストネームが1文字だけのイニシャルに省略されているのに、他では、フルネームで表記されているなど。あるいは、Vol.4, No.2 とあったかと思えば、ほかでは 4(2) になっていたり。このような不整合が発生してしまう可能性はたくさんあるのでよくよく注意。
  3. 和書書籍と和文学術誌の名は『』で、和文論文題名は「」でくくる。
    英文は『』を使う代わりに名を斜体で表記し、論文題名は「」ではなく“”でくくる。これも間違える人が多数。
  4. 日英をわけてそれぞれ五十音順とアルファベット順に並べてもよい。あるいは和文献著者名をローマ字読みして、全部をアルファベット順にしてもよい。

V. ワードの便利な使い方について

  1. まず「編集記号」を表示しよう。下図で赤矢印の先をクリックすると表示できる。これで改行マークや挿入された空白が見えるようになります。


  2. スタイル機能の活用を原則とする。章のタイトルは「見出し1」、節のタイトルは「見出し2」としておけば、目次も自動で作成できる。上図の赤矢印の右側に「あア亜」と表示されている部分で、スタイルを設定できる。
  3. 水平位置を調整するためにスペースを挿入しないこと。「インデント」「右寄せ」「センタリング」を使うこと。水平位置をそろえる1つの方法は、キーボード左にあるTABキーを押して「タブ」を挿入すること。あるいは、「ルーラー」も使おう。上図で楕円で囲んだ部分にある「ルーラー」を一時的に使う。ルーラーが見えないときは「表示」タブで表示できるように設定する。ただし、文書全体での処理ではないので統一性が損なわれます。あまりおすすめしません。
  4. 縦方向の間隔調整のためだけに改行を挿入しない。代わりにスタイルを活用する。例ええば、節タイトルを見出し2にして、見出し2の書式に「段落前」は1行空けるといった設定をすればよい。
  5. 「改ページ」機能を使う。改ページのために改行を挿入しない。
  6. 参考資料「図表番号の挿入」を使う。この機能を使っておけば、図表の追加削除したり、順序を変更したりしても、自動的に番号をつけなおしてくれるし、図表目次も自動的に作成できる。
  7. 式番号やページ数を相互に引用するときなどは、「相互参照」を使う。
  8. 箇条書きなどで番号を改めないものの改行したいというときは「Shift+Enter」を打つ。
  9. 上級者は「フィールド」も使いましょう。ワード内で使える変数のようなものです。
以上で紹介された機能を、とりあえずいじって使ってみるか、無視するか。ここに向上心や学習意欲が現れるような気がしています。

VI. そのほか

卒業論文の構成について

次のような構成になるはず。
  • タイトル頁(次の偶数ページは空白にする。このあたりは専門書を参考に。)
  • 要約(フォーマルな内容のもの。パーソナルには一切しない)
  • まえがき(optional. この卒論の内容紹介とそれを書くにいたった簡単な経緯。すこしパーソナル。)
  • 目次
  • 図表目次
  • 第1章
  •  第1節
  • 第N章…
  • Appendix 
  • A1. ….
  • A2. ….
  • 参考文献 ← Appendixの前におくことも多いが、参考文献最後のほうが締まる。
  • 索引      ← 専門用語や事例がたくさん登場する場合にお好みで。
  • あとがき(大学生活やゼミ活動や卒論などを振りかえるパーソナルな感想。)
  • 奥付 (ページ番号いれない)
第1章は全体的な導入にする。大部になる場合、最後のN章は全体的なまとめになる。見開き印刷の場合、各章のとびらは奇数ページに(横書きであれば見開き右側に)。

製本や印刷について

カラーページはカラー印刷のこと。両面印刷でも片面印刷でも可。インクジェットプリンターによる出力は不可。必ず、レーザープリンターでの印刷にすること。上質な紙を使い、再生紙は避けよう。自分用にぜひとも1部を製本しましょう、数千円をケチらない。できれば保護者さんにも1部。

以上です、グッドラック。