ラベル 学会発表 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 学会発表 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2013年2月2日

実験経済学:論文のトレンド(京都大学でトーク)

実験経済学の論文のトレンド(および研究のデューデリジェンス)について、京都大学でトークいたしました。京都大学が経済実験室を新規開設した記念に2日間のワークショップが開かれ、15人がトーク。私は、そのオープニングに60分話す機会をいただきました。どうもありがとうございます。
 前半40分は「論文のトレンド」について、後半20分は「研究のデューデリジェンス」について。前半の発表スライドは以下でご覧いただきます。解説は以下に。



まず、実験経済学の論文数の動向について5年毎に棒グラフにしてみました(下図の左)。EconLitでSubject欄に"experiments"を含む論文の数をまとめました(まれにモンテカルロ実験といった例外もあるので、概数です)。特に2000年台で伸びています。実験経済学の祖 Vernon Smith先生のノーベル賞受賞が2002年ですから、実験経済学のプレゼンスが大きくなったのは2000年台前半の出来事です。主要掲載誌別に数えてみて、2001~05年と06年~10年を比較したのが、下図の右。

後半の5年で掲載論文数がずいぶん増えましたが、注目すべきは、AER掲載数が4倍に増えていること。たしかにAERに実験経済の論文がずいぶん載るようになったとおもいます。あとは、JEBO(J. of Economic Behavior and Organization)に実験経済の論文が大量に載るようになりました。JEBOのassociate editorをみると、実験経済学を専門とする経済学者がかなり多いです。

 Charles Noussair教授の講演スライドにどんなトピックの実験論文が載ったかというデータがあったので、それを円グラフ(左の図)にしてNoussair教授のまとめを紹介・解説。「社会選好」が36%, 「市場実験」が24%, 「意思決定」が14%, あとは「ゲーム」が21%という感じだそうです。
最後に、ところで実験論文1本あたり、だいたいどのくらいの被験者数になっているのかをAERでみてみました。多いものは800人のサンプルサイズになっていたり、少ないものだと100人未満。やはり理論部分で貢献があれば、実験パートがおまけ程度でも大丈夫。逆に、理論部分に新規性がない場合は、実験でいろいろなトリートメントを用意して比較することでインパクトを出さないとパブリッシュにはいたらないという様子がいみてとれました。
 後半のデューデリについては、1)被験者保護の手続き(IRB)、2)捏造を防止・疑われないための手続き、3)利益相反確認の手続き、について、事例などを紹介させていただきました。

京大周辺には子どもの頃から何度か訪れていましたが、京大キャンパス内は初めて。曽祖父が法学部長をしていた頃の校舎が残っていて驚き。いまの法学部校舎はちょうど彼が東北大から京大に移籍した頃に建てられたそうで、研究室の場所がわかればいずれみてみたいものと思う。となりが節分で有名な吉田神社で、お祭りをやっていました。

2012年6月24日

「規約主義」:経済学は精巧なフィクションにすぎないのか(日本経済学会での討論)

「経済学は実在するのか"道具"にすぎないのか」というタイトルで話しました。日本経済学会2012年度春季大会(北海道大学)の特別セッションで、加藤淳子先生(東京大学)が「脳神経科学実験で人間の社会行動の何がわかるか」で発表なさったあとの討論をさせていただきました。

まず、神経経済学の問題関心・発見の例として、心の理論(Theory of Mind)と数当てゲームにおける推論深度の相関を紹介しました。本題はここからです。
 脳の活動を観察する神経経済学では、「コンテクストによって同じ行動(選択)によって意味が異なる」と言われることもありますが、経済学の「顕示選好理論(revealed preference)」アプローチからすれば、「so what(だから、なに)?」となりうる。なぜかというと...。経済学における意思決定の理論は、観察可能な選択結果(意思決定の結果の部分だけ)に立脚した理論であって、意思決定プロセスそのものを直接扱いはしないからです。そうした立場にたてば、「同じ行動でも意味が異なる」というのは本質でない、と。(こうきくと「過程を無視しちゃ意味ないだろう」と批判したくなりますが、これにはこれなりの理屈と意義があります。)
『科学と仮説』
つまり、選択結果が整合的に説明できればいい---できさえすればいい---という態度・立場ともなります。経済理論は、選択結果を整合的に説明できさえすればよい。したがって、整合性が損なわれないかぎり、「合理的経済人の仮定」だとか「効用最大化」とか、そういった経済理論の前提は必ずしも真である必要はないのです。
 経済理論は、それ自体が本当に世界のあるがままを記述しているわけではなく、我々人間が認識を深めるや議論をするための便宜的な「道具」にすぎない。思い出すのは、ポアンカレが『科学と仮説』のなかで述べた次のことばです(岩波文庫版p.76):

幾何学の公理は先天的総合判断でもないし、実験的事実でもない。それは規約である。

平行線が交わらないユークリッド幾何学だろうが、平行線など引けない非ユークリッド幾何学だろうが、どちらも正しい。もちろん、前者のほうが我々人間には極めてもっともらしいのですが、本当に正しいとは言い切れない。つまり、平行線公準は、ただの規約(取り決め)にすぎず、その正しさを云々することは無意味である。平行線があるという前提(規約)で話をすすめるか、あるいは、平行線は引けないという前提(規約)で話をすすめるか、どちらかを選べばいいだけだというのです。科学の多くは、このように選択が可能な規約のうち、もっともらしいものを選んで、それにのっとって理論を構築しているのだという考え。

「経済学の公理は先天的総合判断でもないし、実験的事実でもない。それは規約である。」
それでは経済学は真であるか、という問を何と思考すべきであろうか。[だが、]この問は何も意義を有しない。」
ポアンカレ『科学と仮説』をもじって引用。(幾何学→経済学)
同じように、「経済学の公理は先天的総合判断でもないし、実験的事実でもない。それは規約にすぎない。」といえるはずです。経済理論は本当の実体経済についての科学ではなくて、ある規約にのっとったひとつの壮大な物語だということ。その規約のひとつがたとえば「完全競争」の仮定でしょう。完全競争市場など存在しない、という批判に対しては、「いやこれはあくまで規約であって、仮にそうならば(as if)、どういったことが予想されるかを考えているだけだ」ということができます。
 幾何学ならばまだしも、社会科学で、それも経済政策といった人々の生活に関わりの深い学問分野で、「経済学は規約主義的である」といいきるのも、やや無責任だと私は思います。経済理論を学問として真剣に勉強していれば、誰もが一度は抱く疑問でしょう。ただ、人の意思決定プロセスは不可知なのだから、そのように割り切らざるをえないところがあったわけです。

規約主義をひっくりかえせるか
ただし、神経経済学の研究が明らかにしてきたように、選択プロセスについての神経基盤(neural basis)がみつかるとなれば、話は別です。選択プロセスが「規約」ではなく、実在するというのなら、経済学は規約主義をひっくりかえして、観察された現象については謙虚に向き合うべきだし、同時に、実在する科学理論だともっと自信をもっていいと思います。
 スライドではもう1点、経済学における「精密な計測」の意義を事例をもとに強調しました。それはまた別の機会に。

2011年12月15日

ESA@厦門大学で学会発表しました

中国アモイで開催されたESAのアジア太平洋大会で発表して来ました。
「自強不息 上於至善」の碑
同様のものが学内に複数ありました
 今回は、2011年2月に実施した時間選好に関する実験の結果を発表・宣伝してきました。時間割引関数をグラフに描くと、それが逆S字型になることを検証した実験です。
 会場は、厦門大学。厦門市は、台湾のちょうど向かい側で、成田からも直行便があって、約4時間の距離です。厦門大学キャンパスの真ん中には、大きな池があって、そのほとりでは、たくさんの学生さんたちが英語の音読練習をしていました。英語シャドウイングの学生さんたちのすぐ近くにあるのが、「自強不息 上於至善」のスローガン。大学の正門前にはマクドナルドがあるのだけど、スローガンをみると、ああ、共産圏にきたのだと実感しますね。
 
ここは、実験経済学に重点をおいているらしく、実験室を新しくつくって経済実験の研究をサポートしています。私はこの学会でプログラム委員でもあったので、次回のアジア太平洋大会の算段をつけてきました。東京で2013年2月に開催予定と決まりました。ほんとは、この2012年大会を東京で開催することを検討していたのですが、原発の状況も全く先が読めなかったので、東京開催は諦めていたところでした。次は大丈夫であることを願います。

2011年12月10日

行動経済学会に息子と。討論・座長・理事会。

第5回行動経済学会に3歳息子といってきました。翌週に中国出張があり、妻に新生児と子どもだけを残しておくわけにいかず、今回は同伴。会場の関西学院大学までシッターさんに来てもらい、会期中2日間は、休憩室やキャンパスで遊んでもらいました。

私は発表はしなかったのですが、討論・座長・理事、といった役を果たしました。今年度、行動経済学会の理事会メンバーになりまして、どうぞよろしくお願いいたします。

ちょうど息子が『大阪うまいもんの歌』を覚えたので、歌詞に登場する名所を見せてあげました。「♪ 大阪にはうまいもん、いっぱいあるんやで~。か~に道楽、くいだおれ~、吉本新喜劇~(なんでやねん!)♪」を見せてあげようと、行ってきました。くいだおれ人形に抱きつき、かに道楽にも納得。吉本は観られなかったのですが、吉本スクールの若い人達が忘年会お笑いをしていたので、それを見学。雰囲気がやっぱり面白かったようで、満足気に見ていました。ありがとう、大阪。新幹線にのって10時前には帰宅。

2011年10月30日

日独先端科学シンポジウムで講演

第8回「日独先端科学シンポジウム」がホテルニューオータニで開催され、私は社会科学分野の日本側スピーカーとして講演しました。

ドイツ・フンボルト財団と日本学術振興会の共催で、毎年開かれているもの。開催地は日独交互で、今年は日本で開催されました。ドイツ大使館でレセプションや、浅草観光と、ソーシャルイベントもしっかりあって若手科学者の交流を目的としているようです。
3日間午前午後の終日開催で、6つの合同セッションがもたれました。分野は、物理・化学・生物学・地球科学・計算機・社会科学とあるようです。私は社会科学分野の日本側スピーカーとして「時間選好」の概念と、最近発見した「未来バイアス」について話しました。

ふだん聴くことのないいわゆる"理系"の研究成果や発表に触れられたことが一番の勉強になりました。統制実験をしない・できないで発展してきた経済学の特異性も改めて実感。理系プレゼンから学ぶも多かったです。

妻が第2子出産直後だったので、3歳息子をおいていけず、初日レセプション・浅草観光・最終日ディナーには息子を連れて行きました(他の時間帯にはシッターさんに来てもらいました)。ランチには帰宅して新生児を沐浴したりと大忙しでしたが、ニューオータニの日本庭園を見渡すラウンジでの朝食はすばらしかったです。息子が指さしているのは、色鮮やかな大きな鯉たち。戦国時代の加藤清正が造り、江戸時代は井伊家、維新後は伏見宮家と引き継がれてきた庭園だそうです。

2010年9月13日

『社会科学における実験の意義』 サマースクールで講演

実験社会科学 サマースクール 2010』で、一番はじめのレクチャーを担当させていただきました。タイトルは、「社会科学における実験の意義」と大風呂敷を広げたので、今回は、壊血病の話をすることにしました。壊血病はビタミンCが不足すると発症し、血管がぼろぼろになってあっという間に死んでしまう恐ろしい病気です。


大航海時代に、長い航海の間に船員の多くがこの病気にかかったそうです。ただし、オランダの東インド会社所属の船乗りたちは、新鮮な野菜が壊血病に効くことを経験的に知っていました。

2010年9月12日

第14回実験社会科学カンファレンス 運営責任者


一橋大学でカンファレンスを開催しました。運営は私で、主催は、文部科学省特定領域研究『実験社会科学 ―実験が切り開く21世紀の社会科学―』 です。

発表内容などは、カンファレンスのウェブサイトをごらんください。
http://www.econ.hit-u.ac.jp/~kan/expss2010/index.html

【数当てゲーム(p-beauty contest)】
せっかくたくさんの人が集まるので、参加ご登録いただいたみなさんで、余興のゲームを行いました。

【ゲームの概要】
0~100までのなかから、数をひとつ選んでください。下に書いてあるルールにしたがって、当選番号が決まります。あなたが選んだ数が、他の人の選んだ数とくらべて、その当選番号にいちばん近い数であれば、あなたに賞品を差し上げます。

2010年8月11日

時間選好の論文が Games and Economic Behaviorに

時間選好の実験論文が、Games and Economic Behavior に載ります。タイトルは"Non-parametric test of time consistency: Present bias and future bias"です。

私の論文は、ほぼすべての時間選好モデルが暗黙に前提としている条件を指摘して、その解決方法を提案したもの。さらに、非合理的な行動としてよく知られている「現在バイアス」だけでなく、「"未来"バイアス」もある可能性を実験によって確かめ、時間割引関数が逆S字カーブを描くこと示した(ええと、画期的なものだろう)。内容を以下に紹介します。

2010年6月22日

コペンハーゲン Risk and Time Preferences

コペンハーゲンのビジネススクールの「リスク選好・時間選好カンファレンス」に行ってきた。この分野で実験をしている人たちが多く集まっていたので、いろいろと勉強になる。カンファレンス出席者が、論文を書いた時のレフェリーになるかもしれないので、どういう傾向のことに関心があるのかをシェアするのはとても重要なこと。

コペンハーゲン駅前には、あの世界最古のテーマパークというチボリ公園(写真)がある。日本にもかつて岡山県倉敷駅前に「倉敷チボリ公園」という、この本家チボリと"提携"していたものがあった(1997~2008年)。赤字の三セクみたさに倉敷チボリを訪れたのだけど、そのときは「やれやれ」としか思わなかった。それが今回、この本家チボリのゆったりとした時間が流れる落ち着いた雰囲気を体感して、なるほどこういうものを作りたかったのだなと少し納得。

さて、私は、主催者たちが以前に考案した実験方法についてコメントしていたもので、それに感謝するためかディナーに呼んでくれた。その実験方法を、彼らは incentive compatible (回答者がウソをつかない)ものとしていたのだけど、実はそれはちょっと違っていて、そのことを教えてあげた次第。私も当初、彼らの手法を使わせてもらおうとしたのがけど、よおく考えてみると、ウソをつくことで回答者が得をする反例に気づいた。その反例を教えてあげたので、その御礼ということかな、ディナー美味しかったです、ごちそうさま。

学会会期中、早稲田の実験経済学は1回おやすみ(後日補講)にして、その間は、Machina三角形についての宿題をやってもらっていました。ちょうど、ディナーに、Machina先生もいたので一緒に写真に写ってもらいました。

2009年11月12日

ESA@Tucsonで発表 2009

5回目のESA@アリゾナ。もうそんなに来たんだ。学会について詳しくは過去エントリーをごらんいただければ幸いです。
2006年 http://takekan.blogspot.com/2006/09/esa.html
2007年 http://takekan.blogspot.com/2007/10/esa.html



恒例のポーカー大会。みんなエントリーしています。私は最初のテーブルで敗退。
  

旅行記にようですが、右の写真5枚を上から順にみていくと:
1) westward look resort での学会、ありがたい、心が洗われます。2) 招待講演は Kagel 先生。理論と実験のポジティブな関係についてのレクチャー。 3) ミシガン仲間とメキシコ料理。ソースを客テーブルの目の前で作ってくれます。 4) ポーカー大会。やっぱりアグレッシブに勝負しないと生き残れないんですね。 5) Walmart. アメリカのメガストア、心が癒されるよ。大学院生だったころの気晴らし・現実逃避先だった。いろんなものが安い、とにかく物量作戦。アメリカだあ。

2009年9月1日

人文・社会科学系の人のためのニューロサイエンス入門

文部科学省特定領域研究「実験社会科学 - 実験が切り開く21世紀の社会科学 -」が主催の「人文・社会科学系の人のためのニューロサイエンス入門」に行って勉強してきました。

つづいて、神戸に移動して、第13回 実験社会科学カンファレンスで実験の中間発表をしてきました。早くペーパーにまとめたい。

2008年12月7日

信州大学 意思決定理論セミナーで発表

西村直子先生(信州大学)と西村幸浩先生(横浜国立大学)からお誘いを受けて意思決定理論に関するセミナー発表に行ってきました。

ここでは若手の意思決定理論の研究者の皆さんに会うことができました。研究者はふだん、日本の全国各地の大学で研究・教育に携わっているため、同世代で同分野の人と顔を合わせる機会はほとんどありません。とても貴重な週末を過ごすことができました。

2008年11月14日

ESA@Tucsonで発表

4回目のESA@アリゾナ発表。実験経済学を始めた功績でノーベル記念経済学賞をもらった Vernon Smith さんが創設したのがこのESA (Economic Science Association) です。2007年2006年のそれぞれのブログエントリでだいたい書いたとおりですので、そちらをご参照ください。

今回の目玉は、私のミシガン大学での指導教官Yanと、さらにYanの指導教官であるJohnもいたので、3人で記念写真をとってもらったことでしょう。かつてのオフィスメートにシャッターを押してもらって、彼がひとこと "Hmm, generations." 私も2人のようなビッグになりたいです。

2008年10月31日

岐阜聖徳学園大学でセミナー発表

大阪大学での翌日、蔵研也先生・松葉敬文先生・佐藤淳先生のセミナーで発表させていただきました。先生方はテストステロン(男性ホルモン)と経済行動の関係を調べるとても面白い研究をされています。

蔵先生はご著書『リバタリアン宣言』でお書きになっている通り、リバタリアン。たとえば、政府は人々のモラルの番人ではないとするのがリバタリアンですが、保守派とも進歩派(リベラル)とも異なるため、理解を得るのはなかなか難しいようです。

社会問題に対して、すぐに「"クニガキチント"規制しないからだめなんだ」という他力本願で自分はなにもしない人たちがたくさんいますね。これじゃいかんだろうと。私も全く同感です。私の考え方も部分的にリバタリアンと重なるところがあるため、お話はとても刺激的でした。蔵先生のご著書はとてもわかりやすく面白いので、ぜひ読んでみてください。

2008年10月30日

大阪大学でセミナー発表

筒井義郎先生主催のセミナーでアイ・トラッカーを使ったオークション実験について発表させていただきました。オークション参加者の意思決定を、彼らの視線の動きから解明を試みています。

筒井先生は今年から行動経済学の講義を開講されたそうです。行動経済学は注目を集めている分野ですが、講義を設けている大学はまだ少ないでしょう。阪大の学生さんたちはとても恵まれた環境にあるなと思いました。

2008年9月12日

香港科学技術大学でセミナー発表

香港科学技術大学でセミナー発表しました。組み合わせオークションに関する経済実験とアイトラック分析を加えた研究について話しました。担当の Hossain助教授からは以前に突然メールをいただき「うちの大学でジョブセミナー(助教授の採用試験を兼ねた研究発表)をしないか」とのお誘いを受けました。すでに一橋大学への就職が決まっており、子どもも日本で生まれる予定でしたのでお断りしましたが、貴重な機会なのでセミナー発表はさせていただくことにしました。
 香港科学技術大学は、1991年設立の新しい大学ですが、経済学部の世界ランキングではいつも70位くらい、アジアでは1位です。発表の後は、同大学の奥井先生、田中先生に美味しい海鮮レストランに連れて行っていただきました。大きな生け簀から海鮮を選んで料理してもらいました。30cmはある蝦蛄(しゃこ)などがとても美味しかったし、珍しかったです。ご馳走様でした!

2008年6月28日

ESA@Caltechで発表

カリフォルニア工科大学で開かれたESA(実験経済学会)で発表しました。今回は早稲田大学の竹内あいさんにお願いして、アイトラック機でデータをとっていただきました。コリン(カメレール、Colin Camerer教授)に見せると「それって、おれたちが来年やろうとしてたことじゃん」と調子のいいことを言ってました。コリンに追いつかれる前に論文を書きあげなければ。左の写真は、アイトラック機による分析結果の一部です(早稲田大学・竹内さんの分析と出力)。実験参加者がスクリーンのどこを見ながら意思決定をしているか分析することができます。リアルタイムで、視線を記録することもできれば、左写真にあるように、長い間視線がとどまっていた場所(Hot Spot)がどこかも教えてくれます。赤いところがその部分、ここを見ながら色々と考えて意思決定にいたったということでしょう。別名、heat map とも呼ばれているようです。 一橋の宣伝をするために、HITOTSUBASHIのTシャツを来て発表しました(セッション参加者は30名ちょっと)。日本からの参加者は東大の計盛さんと私の二人でした。ゴシップですが、オークション分野でのビジネスチャンスは大きいようです。→竹内幹の日記: 400万円払うから、なにもしないで下さい

2008年2月8日

アムステルダム大学でセミナー発表

オランダのアムステルダム大学でセミナー発表してきました。ここにはCREED(Center for Research in Experimental Economics and Political Decision-Making)という実験経済・政治意思決定研究センターがあり、前から訪れてみたいと思っていました。ランチセミナーということで、オランダ式サンドイッチ(名産ゴーダチーズがはさんであります)がでました。ごちそうさまです。結果の解釈方法や仮説検証についてありがたい質問・コメントが出て、とても有意義でした。ヨーロッパでの発表は3度目ですが、アメリカとは笑いのツボとタイミングがすこしちがうので、これもなかなか面白かったです。前日の夜に、経済学部のたてものをとってみました(写真右)。ガラス張りの正面がきれいですね。

2007年11月24日

実験社会科学@北海道大学で報告

「実験社会科学-実験が切り開く21世紀の社会科学」というカンファレンスで発表してきました。2日半のプログラムで、経済学・心理学を中心に8人の先生方が報告。そのなかで私は、アメリカの「IRB」という実験研究における被験者保護の手続きについて説明しました。参加者は50名ぐらいだったと思います。

IRB(Institutaional Review Boardの略)は、実験研究計画を事前に審査する内部委員会のことで、日本でいう「倫理委員会」みたいなものでしょう。人間を対象とする研究(人文・社会科学も含む)をするほとんどの大学に設置されています。被験者を含む研究は、ひとつひとつ全てIRBの事前審査を通過しなければなりません。IRBは詳細で具体的な研究計画を要求し、計画書だけでも数十ページになることもあります。そして、審査基準がまた極めて厳しい。被験者に危害がおよぶ可能性が少しでもあれば、それに対する処置が厳格に求められます。

私の報告では、現在の運用事情を紹介した上で、この制度の悲しく恐ろしい歴史的背景(タスキーギ梅毒研究、アイヒマン実験など)を説明しました。1960年代のアメリカでも、同意も得ないままに研究目的で肝炎ウイルスを人に注射したり、サルの腎臓を人に移植したりと、被験者の人権を無視した人体実験が数多くなされていました。こうした事件の反省を受けて導入されたのがIRBだったわけです。社会科学でなされるインタビュー調査や経済実験などのように、被験者・協力者に身体的危害が及びそうにない研究でも、プライバシー侵害や被験者の不利益となる場合があります。たとえば、職場の上司にアンケート内容が間接的にでも知られてしまう状況などは許されません。こういうわけで人文・社会科学の研究にも、IRBの厳格な審査が要求されています。最近は、これが研究者を悩ませています。

この「実験社会科学」は文部科学省の特定領域研究に選ばれており、会場は、中心メンバーの1人の山岸俊男先生がいらっしゃる北海道大学でした。札幌市内では22日から始まったライトアップがきれいです。

2007年10月22日

実験経済学会(ESA)で発表

ESA(アメリカの「実験経済学会」)で発表。毎年、アリゾナ州トゥーソン(Tucson)で開催されます、私は今回で3回目。学会の内容は別エントリーで書くので、ここではソーシャルイベントの目玉のポーカー大会を紹介しましょう。Rachel Croson さん(ペン大→テキサス大ダラス校)が毎年開催していて、今回は61人がエントリーしました。写真は4時間経った後の決勝テーブルで、中央に私が写っていますが、勝ち残ったわけではなくカードシャッフルの役を引き受け決勝戦を観戦していただけです。

行動経済学・実験経済学の専門家はオークションに詳しいということもあって、Yahoo! やら Google からスカウトが来ます。私の(写真に向って右)となりに座っているのは、David Reiley 教授(アリゾナ大)で今年は1年間だけ Yahoo! Research でアドバイザーをします(年棒は最低2000万円くらいでしょうか。来月会うときに聞いてみようかな)。同テーブルにいた別の人は Google から「うちに来ませんか?」と電話があったけど、断ったよと言っていました。

私のとなりでカードをディールしている人が、Rachel。この人がまたとても明るくいい人で、後人の指導を惜しまぬビッグネーム。ペンシルバニア大ウォートンビジネススクール准教授の彼女には企業からコンサルの依頼が殺到するそうです。彼女が前に話してくれたのですが、講演料をあえて「最低100万円にしておかないと断りきれない」というほどでした。ところが、今年 family reason (家庭の事情)でテキサス大学ダラス校に移りました。世界ランキングで250位くらいのダラス校にとっては、世界トップのウォートンから彼女が来てくれたのは、棚ボタというと失礼ですが、まあそういうことでしょうね。

こういう「へー、そうなんだ」という話はソーシャルイベントでしか聞けませんね。実験経済学ならESAが本場だと思うのですが、日本から参加するリサーチャーがいないのがちょっと残念です。