2020年2月17日

「となりの人は石鹸で手を洗っていますか?」新型コロナウイルス対策にも。手洗いを促す行動経済学とナッジ

手洗いは感染症予防の基本。行動経済学や「ナッジ(行動変容を促すちょっとした仕掛け)」を使って手洗いを促す施策と研究を紹介します。例えばメッセージでは「となりの人は石鹸をちゃんと使って手を洗っていますか?」などが有効
ここではトイレでの手洗いを促進するためのナッジ9件を紹介します。いずれも、(1)液体石鹸の使用量を測定したり、手洗いを実際に観察したりして、ナッジやポスター・メッセージの効果を推定する点、(2)ポスターなどを掲示しない「統制群(コントロールグループ)」を設けて、そのグループとの差によって、ナッジの効果を推定する点に、特長があります。

1) 床に矢印ステッカーを貼って洗面台に誘導

矢印ステッカーによる洗面台への誘導効果
 (Blackwell, et al., 2018)
Blackwell, et al. (2018) "Nudges in the restroom: How hand-washing can be impacted by environmental cues," Journal of Behavioral Economics for Policy, Vol.2, No.2, pp.41-47.(論文題名「トイレにおけるナッジ:環境の手引により手洗いはどのように影響されるか」)

 延べ19,098名のトイレ利用者の液体石鹸使用量から手洗い頻度を測定し、ナッジの効果を推定したアメリカでの実験。洗面台にスマイリー(ニコちゃん)マークのステッカーと、洗面台へ誘導する矢印のステッカーの効果を測定。床に貼られた矢印ステッカーによって、手洗い頻度が、男性は40%が46%に、女性では66%が76%に増加



2) 子どもも足跡をたどって手洗い場に行く

Dreibelbis, et al. (2016) "Behavior change without behavior change communication: Nudging handwashing among primary school students in Bangladesh," International Journal of Environmental Research and Public Health, Vol.13, pp.129-135. (論文題名「コミュニケーションを介さない行動変容:バングラデシュの小学生の手洗いへのナッジ」)
トイレを出てからポリタンクに誘導する (Dreibelbis, et al., 2016)

 バングラデシュの小学校の屋外トイレ横にポリタンク手洗い設備(HW)を設置し、トイレの出口からHWに至る経路に足跡をペンキで描き、HWに手型をペンキで描いた。子どもたちの手洗い頻度を観察した。さらに、2週間後と6週間後の手洗い頻度も合計7日間にわたって観察した。各観察回に平均して138回のトイレ利用があり、観察数は延べ962回。HW設置以前には4%に過ぎなかった手洗い頻度が、最終的には74%にまで改善した。