2013年2月2日

実験経済学:論文のトレンド(京都大学でトーク)

実験経済学の論文のトレンド(および研究のデューデリジェンス)について、京都大学でトークいたしました。京都大学が経済実験室を新規開設した記念に2日間のワークショップが開かれ、15人がトーク。私は、そのオープニングに60分話す機会をいただきました。どうもありがとうございます。
 前半40分は「論文のトレンド」について、後半20分は「研究のデューデリジェンス」について。前半の発表スライドは以下でご覧いただきます。解説は以下に。



まず、実験経済学の論文数の動向について5年毎に棒グラフにしてみました(下図の左)。EconLitでSubject欄に"experiments"を含む論文の数をまとめました(まれにモンテカルロ実験といった例外もあるので、概数です)。特に2000年台で伸びています。実験経済学の祖 Vernon Smith先生のノーベル賞受賞が2002年ですから、実験経済学のプレゼンスが大きくなったのは2000年台前半の出来事です。主要掲載誌別に数えてみて、2001~05年と06年~10年を比較したのが、下図の右。

後半の5年で掲載論文数がずいぶん増えましたが、注目すべきは、AER掲載数が4倍に増えていること。たしかにAERに実験経済の論文がずいぶん載るようになったとおもいます。あとは、JEBO(J. of Economic Behavior and Organization)に実験経済の論文が大量に載るようになりました。JEBOのassociate editorをみると、実験経済学を専門とする経済学者がかなり多いです。

 Charles Noussair教授の講演スライドにどんなトピックの実験論文が載ったかというデータがあったので、それを円グラフ(左の図)にしてNoussair教授のまとめを紹介・解説。「社会選好」が36%, 「市場実験」が24%, 「意思決定」が14%, あとは「ゲーム」が21%という感じだそうです。
最後に、ところで実験論文1本あたり、だいたいどのくらいの被験者数になっているのかをAERでみてみました。多いものは800人のサンプルサイズになっていたり、少ないものだと100人未満。やはり理論部分で貢献があれば、実験パートがおまけ程度でも大丈夫。逆に、理論部分に新規性がない場合は、実験でいろいろなトリートメントを用意して比較することでインパクトを出さないとパブリッシュにはいたらないという様子がいみてとれました。
 後半のデューデリについては、1)被験者保護の手続き(IRB)、2)捏造を防止・疑われないための手続き、3)利益相反確認の手続き、について、事例などを紹介させていただきました。

京大周辺には子どもの頃から何度か訪れていましたが、京大キャンパス内は初めて。曽祖父が法学部長をしていた頃の校舎が残っていて驚き。いまの法学部校舎はちょうど彼が東北大から京大に移籍した頃に建てられたそうで、研究室の場所がわかればいずれみてみたいものと思う。となりが節分で有名な吉田神社で、お祭りをやっていました。

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