2010年6月4日

博士号をとるステップ:修士号と博士号

とても懐かしい。おもわず買ってしまった。このクッキーを、3年前の5月のディフェンスのときに買ってもらったのを思い出した。ディフェンスというのは博士論文の口述試験のこと。博士号取得の最終段階で必要なステップだ。

博士論文についての発表だから、2時間以上になるのは当たり前。審査員となっていただく先生方のおなかをすかせてはいけないので、飲み物といろいろなスナックを用意して備えた。そのスナックのひとつが、写真のクッキーだ。これをみて3年前のことが思い出された。2007年の夏に博士号を取得 → 妻の妊娠 → LAと東京の往復生活 → 一橋に就職 → 日本に戻る → 出産・育児と、振り返る暇もないまま3年が過ぎた。博士論文もパブリッシュしたことだし、忘れてしまう前に、ミシガン大学での博士号取得プロセスを振り返っておこうと思う。

博士(Ph.D.、「ピーエイチディー」)になるときの手続きは次の通り。
Course work → preliminary (comprehensive) exam → 3rd year paper → committee → proposal defense → oral defense → doctoral thesis (dissertation).

大学を卒業すると、学士号(BA)という学位を取得できる。大学の卒業証書には、あなたは学士になったんだということが書かれているはず。それで、そのあと大学院に行ってとれるのが、修士号(MA、エムエー)だ。通常は2年間、ある特定の専門分野についてみっちり勉強することで取得できる。ビジネススクールでとれるMBAは、Master of Business Administration の頭文字で、ビジネス分野(経営学)での修士号という意味だ。

私が取得したPh.D.(博士号)は、そのさらに先。修士号がある特定分野のことを詳しく知っていることの証であれば、博士号レベルでは、その特定分野の最先端を切り開いていくことが求められる。このちがいは、次のようにいえる。修士になるには、教科書に書いてあることや何かの解説をすごいスピードで吸収していかなければならない。それに対して、博士になるためには、修士になるための勉強をする人達が将来読むであろう教科書に載るような"発見"をしたり、問題を"解決"したりする必要がある。将来の教科書に書かれるであろうことを今ここで見つけていくのが、博士課程の学生に要求されていることで、すでに発見済みのことを勉強するのが修士課程の学生。決定的に違う。もちろん、博士のやっていることが将来の教科書に載る大発見だということでは必ずしもない。それでも、修士と博士は、そのぐらい違う。小説を書く作家と、その作家の小説をよく読んでいる読者みたいなものか(えらそうだなあ)。まあでも、理想的にいえば、やっぱりそうだろう。実際、修士号取得はかなり楽だ。

さて、その博士号取得プロセス。まずは、コースワークからだ。
Course work: 通常2年。コースワークは講義やクラスの授業で勉強をすること。大学院レベルの教科書や学術論文を読みこなす授業をとる。だいたい3~4科目を同時並行で履修することが多いはず。1科目あたり90分講義が週に2回(とティーチングアシスタントによる解説が1回あることも)だから、だいたい週に90分×8回くらいの授業がある。内容は、ミクロ経済学・マクロ経済学・計量経済学からはじまって、自分の専門分野を3科目とった。私の場合はたしか、公共経済学、理論、IOの3科目。ここまでこなせば修士号(MA、エムエー)を取得請求できる。私は結局、申請しなかったんだけど。

Preliminary examination: コースワーク修了後に受けるのがプレリム、進学試験だ。合計4つ(ミクロ、マクロ、専門科目2つ)のプレリムに合格しないと進級させてもらえず、退学させられる。この試験を、コンプ(comprehensive exam)という大学も多いみたい。だいたいこの段階で3分の1くらいは脱落したと思う。どのくらい脱落するか(させるか)は、大学やその学部のポリシーによって全然ちがうので要確認。ミシガン大学では、だいたい合格率は50%前後にすること(結果的にそうなること)が多かったように思う。受験回数は最高3回(あるいは4回)まで。3回受けてもだめなら、退学(キックアウト)だ。
私の場合、ミクロはトップ(タイ)で合格したものの、マクロには苦戦した。マクロ経済学をあまり好きになれず、全然勉強しなかったのがひびいた。3回目にようやく合格。財務省から留学していたOさんにつきあってもらって、わたし一人は退学の恐怖におびえながら、図書館で勉強したのを覚えている。専門科目のプレリムは、理論と公共経済学を受けた。これらは1回で合格した。

この頃、パーティとかに行って、コースワーク大変だよね、とか話していると、「コースワークなんて、楽だよ。本当のつらさはプレリムのあとに待っているんだ」と多くの上級生から聞かされた。そのときはよくわからなかったけど、なるほど、彼らは正しかった。教科書の勉強さえしていればいいコースワークなんてあまりにも楽なもんだと、私もあとから実感した。(つづく)

0 件のコメント: