2010年12月1日

Associate Editor(編集委員)になりました

Economic InquiryのAssociate Editorになりました。Economic Inquiry(エコノミック・インクワイアリー)は、1962年創刊の経済学学術誌(もちろん"査読"付き)で、経済学の幅広いトピックに関して論文を載せています。特に、研究テーマにとらわれず、専門分野外の経済学者にも様々な研究テーマ内容がわかることを重視しているとのこと。これまでにも9人のノーベル経済学賞受賞者が論文を載せています。

Associate Editor は、日本語に訳すと、編集委員でしょうか。トップにEditor(編集長、主幹)が1人いて、Co-Editor(共編者)が16人、さらに Associate Editorが16人います。
編集長のプレストンマカフィー(Preston McAfee)大先生からメールで依頼があったので、すぐに返事をしました。トップ50に入る経済学学術誌で edit に携わっている日本人は、ほんとうに数人を数えるほど。光栄ですね。

2010年10月の最新号をみると、なるほど、
 直接民主制の所得再分配への影響:スイスでの実証
 経済成長と政教分離:フランスの場合
 成績を甘くつけることの本当のコスト(1960年代からの検証)
といった学際的トピックがあります。

表紙をめくると、Associate Editors リストに「Kan Takeuchi / Hitotsubashi University」と書かれている。先週、一橋大学でトークをしてくださった、Hamermesh先生も「いいね!Department(上司、経済学部)も喜んでくれたでしょ!」と言ってました。

編集長のマカフィーさんは、現在 Yahoo!リサーチのチーフエコノミスト。2007年までカリフォルニア工科大学で経済学の教授をしていたのですが、ヤフーに移籍。インターネットと経済学の結びつきは、近年特に強くなりました。2007年にGoogleがカリフォルニア大学バークレー校のヴァリアン教授を引き抜いたのに対して、ヤフーが招聘したのがこの人(関連ニュース:エコノミストを重宝するシリコン・バレー~事業開発や機能拡充に学者を採用

彼がメールに添付してきたのが、「EDIFYING EDITING(PDF版)」というエッセイでした。

そこにも詳しく書いてありますが、経済学学術誌の査読期間・再投稿プロセスが長くなりすぎている昨今の状況に鑑み、彼の編集方針として「No revisions」というオプションを用意しています。通常は、論文の完成度がいまいちの場合、編集者や査読者は、revise(修正・改訂)を投稿者に要求して、再投稿をうながします。これがとてーも時間がかかるのです、1~2年は平気でかかってしまう。そこで、投稿者が No revisions オプションを選んだ場合は、査読者側は、基本的に Yes or No で応えなければなりません(そのまま採録するか、ボツにするか)。このほうが時間が短縮できます。私も査読するときに、この論文著者は No revisions を選んだので改訂要求はしない方向でよろしく、という旨のメッセージが届くことがあります。

このジャーナルには、他にも面白いことがあって、「Miscellany」分野の論文も載せていることです。文字通り"その他"というか、冗談(トンデモ)経済学論文を採録しているのです。最新号では、国際経済学の大家で、ノーベル経済学賞も受賞したポール・クルーグマンが書いています。タイトルが「恒星間貿易の理論」という"論文"で、惑星間貿易理論を拡張し、特殊相対性理論を適用すべきような状況での貿易理論を考察している。もちろん冗談で、"A solution is derived from economic theory, and two useless but true theorems are proved"とのこと。おもしろいですね。